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『BCGカーボンニュートラル実践経営』
『BCGカーボンニュートラル実践経営』
(日経BP)

 二酸化炭素(CO2)が企業を揺さぶっている。カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ、炭素中立)に関しては2030年や2050年といった報道がなされるが、「将来に解決すべき問題」ではなく、「今取り組まないといけない問題」である。では、企業は何をどのように考えて取り組めばいいのか、ボストン コンサルティング グループ(BCG、東京・中央)の著者陣が書籍『BCGカーボンニュートラル実践経営』にまとめた。この本で整理した9つの「カーボンニュートラル前提条件」に基づき、中国、インド、新興国の現状を分析する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)

 世界はどの程度のスピードでカーボンニュートラルに向かうのだろうか。推進速度を見極めるのに役立つのが「カーボンニュートラル9つの前提条件」だ。この前提条件の充足度が高いと積極姿勢をとり推進速度は速くなることが予想され、充足度が低いと積極的な対応はとらないだろうと予想できる。今回は中国、インド、新興国である。

中国の前提条件充足度

 中国は、米国と同様、ポジティブな要素とネガティブな要素が混在する(図表4)。

図表4 中国のカーボンニュートラル前提条件充足度
図表4 中国のカーボンニュートラル前提条件充足度
〇:条件をほぼ充足、△:一部を充足、×:充足していない。(出所:ボストン コンサルティング グループ)
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 米国との違いは、国内世論を気にする必要が薄いという政治環境にある。中国では、国民一般の環境意識が高いわけでは必ずしもない。しかし、そもそも選挙を意識する必要がなく、戦略的に妥当であると考えれば共産党がカーボンニュートラルに一気にかじを切れる(前提条件①)。また、世界の工場として貿易網に組み込まれており、米国に代わる世界のリーダーを目指すというポジショニングから国際協調にも一定の目配りはするものの、いざとなれば超大国としての独自行動もいとわない(前提条件②)。いわば、国内外ともに、政策的なフリーハンドを確保している。

 このため、経済に負荷をかけてまで取り組みを急ぐ必要はなく、自国の成長に有利な駒を取捨選択しながら進め、結果としてできる範囲でカーボンニュートラルに近づけていけばよい。こうした思考の表れとして、中国のカーボンニュートラル目標年は「2060年」と、IPCCの勧告より10年遅い。そして、再エネ導入量で首位に立つ(前提条件⑤)一方で、化石燃料も旺盛に消費する(前提条件⑥)、EV(電気自動車)や太陽光のプロダクトで高い競争力を誇りつつ(前提条件⑦)、鉄鋼でも世界の過半を占める一大供給地としての立場を崩さない(前提条件⑧)など、アンビバレントな構造を意図的に抱え込みつつ、走り続けている。