インドの前提条件充足度
インドは前提条件⑤「再エネ生産ポテンシャル」、および前提条件⑥「化石燃料依存度」の一部を満たし、再エネによるエネルギー輸入の代替は期待できる。一方で前提条件⑦「脱炭素ビジネス進行度」や前提条件⑨「炭素集約産業依存度」を満たさず、プロダクトやサービスで外貨を稼ぐといった戦略が期待しづらい立場にある。世界3位の排出国であるインドは対策に必要な投資も大きくなることから、カーボンニュートラルと成長の両立が見通しづらい状況にあると言える(図表5)。
インドでは、経済成長を重視する世論に応え政権を維持する必要があり、国民の声は無視できない(前提条件①)。また、先進国との協調を軽視するわけではないが、環境問題については新興国筆頭の立場をより重視し、歴史的に強い反対論を何度も唱えている(前提条件②)。
とはいえ、再生可能エネルギーに背を向けているわけではない。太陽光、風力とも、導入量は世界で五指に入る(前提条件⑤)。しかし、それ以上に外貨を獲得できるような脱炭素のプロダクトやサービスは、インドには見当たらない(前提条件⑦)。むしろ、生産量世界2位の鉄鋼業など、カーボンニュートラルへの流れにより成長が阻害される産業の方が多い(前提条件⑨)。
こうした構造から、自国を含めた新興国には「カーボンニュートラル目標を強制すべきでない」と明言し、中国よりもう一段引いた構えを崩していない。実際、現時点でインド政府は、将来のカーボンニュートラルにはコミットしていない(検討中、との報道はある)。NDC(国が決定する貢献)は提出しているが、コミットしているのは総量ではなく、国内総生産(GDP)当たりの排出削減にとどまっている(GDPが成長すれば、排出総量が増えることもあり得る)。
新興国の前提条件充足度
東南アジアやアフリカの新興国については、国により事情は異なるものの、カーボンニュートラルと成長の両立条件がそろうケースは決して多くはない(図表6)。