
二酸化炭素(CO2)が企業を揺さぶっている。カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ、炭素中立)に関しては2030年や2050年といった報道がなされるが、「将来に解決すべき問題」ではなく、「今取り組まないといけない問題」である。では、企業は何をどのように考えて取り組めばいいのか、ボストン コンサルティング グループ(BCG、東京・中央)の著者陣が書籍『BCGカーボンニュートラル実践経営』にまとめた。この本で整理した9つの「カーボンニュートラル前提条件」に基づき、日本の現状を分析する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)
世界はどの程度のスピードでカーボンニュートラルに向かうのだろうか。推進速度を見極めるのに役立つのが「カーボンニュートラル9つの前提条件」だ。この前提条件の充足度が高いと積極姿勢をとり推進速度は速くなることが予想され、充足度が低いと積極的な対応はとらないだろうと予想できる。
日本のカーボンニュートラル前提条件充足度
今回は日本である(図表7)。
前提条件①国民の支持 → ○
後段の企業・消費者の負荷の大きさも強く影響するものの、他国と比べると、カーボンニュートラルへの取り組みに対しては、相対的に理解、支持が得られやすいと考えられる。ベースとして国民の教育水準が高く、欧州の一部の先進地域ほどではないにしろ、環境問題の重要性に対しての理解がある。
また、昨今の気候変動の影響を受けて、国民の危機意識も高まりつつあることもプラス要因だ。加えて、新型コロナ対応で見られたように、国民が一致団結して取り組まなくてはならないことに対しては、他国と比してコンセンサスを得やすいことも大きい。
前提条件② 国際協調指向 → ○
日本は、人口1.2億、GDP(国内総生産)も世界3位の大国ではあるが、独力で生き延びられる超大国とは言いがたい。よって、安全保障面、経済活動面からも、「国際協調を重視していくことが国益につながる」というのが大方の見方であろう。可能性としては、ナショナリズムが強まったり、極端な考え方を持つ政権が現れたりすることもあり得るが、中長期的な目線からは、国際協調路線は揺るがないと考えられる。
前提条件③ ルール形成力 → △
自国のルールがグローバルのルールになっていくと考えられるほど、国内市場の規模、注目度、魅力度は大きくはない。一方で、経済規模を勘案すると、国際的な影響力は相応の大きさを維持していくと思われるので、工夫次第でルール形成への一定の発言力を保持できると考えられる。