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政府側にも認識させる言葉が必要

 今世界に必要なのはそれができるリーダーです。企業にもできる可能性はあるが、実際にはどうやって機能させられるのかを考えると、やはりそこには「これが私たちが求める市場の在り方だよ」「これが私たちの街の夢だよ」など、ジョイントビジョンを掲げ、思い出させるリーダーシップが必要になります。これは非常に難しいことなので、このイノベーションを起こせる起業家を心から歓迎します。

 新たな市場を創造するイノベーションを可能にするためには、言葉を持ち、政府側にも認識させる変革が必要です。個々の既存ビジネスだけに注力するのではなく、10年後の市場のビジョンを設定し、それに向けて積極的に活動を始める必要があります。それが未来を良い形で実現するための方法だと思っています。

谷本:なるほど。関さんも政府関係者と仕事をしていると思いますが、コミュニケーションが難しいと感じることはありますか。

間にコーディネーターを挟む手も

Code for Japanの関治之氏:政府の方々と起業家では、まったく異なる文化の中で違う言語を話していると言ってもいい状況です。両者に大きな違いがあるため、政府側と企業側の間に通訳となるコーディネーターを入れることがとても重要になります。それが、私が実際に複数の政府機関や自治体で仕事をしながら、スタートアップとも仕事をしている理由であるとも言えます。両者の関係を促進し、翻訳して伝える機能を間に挟むことで、外の人々に対して可能性のドアを開くことができるようになり、これがオープンイノベーションの突破口にもなりえます。

Code for Japanの関治之氏
Code for Japanの関治之氏
(写真提供:ビービット)
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 例えば、私は神戸市のCIO(最高情報責任者)を務めており、市が始めた「アーバン・イノベーション神戸」というプログラムの立ち上げに携わりました。神戸市が地域の課題を説明し、スタートアップ企業に自治体の業務を改善するためのサービス提供を求めるというものです。

 その際、スタートアップ企業が自治体の業務を改善するための要件を、市はあまり詳細に規定していませんでした。そこで、まずはスタートアップ企業との実験的なプロジェクトを3カ月から4カ月実施することで、神戸市はその後、スタートアップ企業とどのように協力していけばいいかを理解できるようになりました。同時に、スタートアップ企業側も自治体と話をする際に何が重要かを理解できたので、やっと両者が同じ言語で話し合えるようになったわけです。その後は自治体がプロジェクトを振り分けて、スタートアップ企業のサービスを購入していきました。異業種との信頼関係を築くには、一緒に仕事をするのも一つの方法だと思います。

 (次回へ続く)

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最先端の33人が語る、世界標準のコンセンサス

著者●藤井保文 監修/定価●2200円(10%税込み)/発行●日経BP/判型●A5変256ページ/発行日●2021年9月21日/ISBN 978-4-296-11041-4