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 累計20万部を突破した書籍『アフターデジタル』シリーズ(日経BP)。オンラインとオフラインの境目がなくなる世界でUX(ユーザーエクスペリエンス)こそが重要であることを論じてきた。

 この「アフターデジタル」のサービス作りについて世界のトップランナーが語り合ったイベント「L&UX 2021」を書籍化したのがシリーズの新刊『アフターデジタルセッションズ』だ。本書に収録したMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)に関する対談を掲載してきたが、最終回(第8回)ではUXについての現時点での結論を紹介する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)

モデレーターを務めるForbes JAPAN編集部の谷本有香氏:次はUXについて聞いていきます。日本でも企業がサービスや商品を提供する際にUXが非常に重要であることが理解されつつありますが、そもそも私たちはUXをどのように考え、理解すべきなのでしょうか。UXやユーザーエンゲージメント、顧客満足度はどのように向上できるのかなど、考えがあれば聞かせてください。

MaaS Globalのサンポ・ヒエタネン氏:日本企業は「物理的なUX」に関しては世界でも画期的な存在であり続けたと思います。ソニーやトヨタなど製品のデザインは素晴らしく、どの企業も非常にうまくやってきました。ただ、「全てをコントロールできる物理的な世界」ではそうだった、と言わざるを得ないでしょう。

MaaS Globalのサンポ・ヒエタネン氏。「MaaS」の提唱者として知られる
MaaS Globalのサンポ・ヒエタネン氏。「MaaS」の提唱者として知られる
(写真提供:ビービット)
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 今私たちはAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の世界、APIエコノミーに移行しようとしています。閉鎖的なエコシステムは存在せず、全てをコントロールすることは不可能です。Googleマップを使うか、ゼンリンのマップを使うか、というように、それぞれの国で異なるサービスを使うやり方をしなければなりません。全ての構成要素を完全にはコントロールできないのがAPIエコノミーの現実であり、現代のテクノロジーが生んだディスラプション(創造的破壊)でしょう。

全体のコントロールは不可能

 エコシステム全体をコントロールするのは不可能という現実を乗り越えなければならず、乗り越えなければリスクが高まります。自分がコントロールできないことを受け入れた後は、必要なことに集中できます。コントロールできないことを受け入れた上で、できる限りシンプルで、優れた使いやすいものを作るためには何を省けばいいのか。これが、UXにおいて最も重要なカギになると思います。

 なぜなら多くの大企業が抱えている最大の問題はコントロールしたがることだからです。たとえこの「全てを完全にはコントロールできない世界」から逃れることはできなくても、いくつかの構成要素を変えたり動かしたり、実行したりできることを理解し、この世界で生きていかなければならないことを理解し、その上で、実際にエンドユーザー向けのサービス提供者としてやるべきことは、サービスを可能な限りシンプルにしようと努めることにあります。