2021年9月1日に発足したデジタル庁。このグランドデザインを描いたキーマンの1人が、「日本のインターネットの父」と称される慶応義塾大学の村井純教授だ。政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)などで過去20年間に渡って国のIT政策に関わってきた同氏は現在、内閣官房参与(デジタル政策)やデジタル庁顧問も務める。日経クロステックはデジタル庁発足前の2021年8月13日に村井氏へのインタビューを実施。デジタル庁発足の経緯、過去の反省や込めた狙い、未来への期待など10の疑問をぶつけた。日経BPムック『DX大全 2022』の発行に合わせて、村井氏が記者の質問に答えた動画を改めて公開する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)
村井純・慶応大教授がT総合戦略本部などで長年提案してきた「省庁間を連携し、政府システムと自治体システムを調和とさせる、新たな法律(ルール)と組織の策定」、つまりデジタル庁の構想が、今のタイミングで実現したことの背景には、コロナ禍で露呈した「デジタル敗戦」が影響していたのだろうか?
この問いかけに対し村井氏は、「それはあんまり事実じゃない」と強く否定した。新たな省庁を作るというのは「並大抵のことじゃない」(村井氏)からだ。つまり、長い時間をかけて準備していたものが、このタイミングで実現したというのが村井氏の認識である。
村井氏が長らく本部員を務めてきたIT総合戦略本部は、各省庁間、そして地方自治体と中央との調整ができないという限界を抱えていた。「できないことの多くの原因はそこに帰着していた」と村井氏は話す。「デジタル敗戦」と言われる状況の多くは行政サービスのオンライン化がうまくいってなかったことに起因する。IT総合戦略本部での活動に限界を感じていた村井氏にとって、敗戦はある意味「必然」であったというのである。
デジタル庁はこうした問題を打破する可能性を秘めている。発足したばかりではあるが、同庁の発足を前提に、前倒しでシステム開発に着手した「ワクチン接種記録システム(VRS)」などの事例もある。村井氏はこうした点に期待していると語った。
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★本誌は「日経クロステック EXPO 2021」の参加特典・「日経クロステック2021年秋割」の申し込み特典の「日経クロステックDX 特別編集版」にコンテンツを増補して制作したものです。