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 「経済安保」という言葉をよく聞くようになった。IT、AI(人工知能)、デジタル技術などは対象となり、国内外の法規制への目配せが必要だという。弁護士である著者陣が、ビジネスパーソン向けに『シン・経済安保』を書き下ろした。本書から「はじめに」を再編集して紹介する。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)

 企業にとって「経済安全保障を確保する」とは、実際、何をするのでしょうか。それは「重要技術を守る」ことです。経済安全保障を脅かす可能性のあるあらゆるリスクを踏まえ、自社がそのリスクを顕在化させていないことを常に確認し、顕在化させる可能性があるなら先手を打つのです。

激動する国際情勢の下で「シン・経済安保」を狙う新たな法規制が自社の事業のリスクになり得る
激動する国際情勢の下で「シン・経済安保」を狙う新たな法規制が自社の事業のリスクになり得る
(出所:123RF)
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 例えば、会社で次のような業務を実施しているなら、既に経済安全保障対策を実施していると言えます。

  • 自社のお客様情報が格納されているサーバーの所在地、アクセス権限を誰(どの国の法人)に付与しているのかを確認している。
  • 業務委託先の株主構成を確認し、SDN(Specially Designated Nationals and blocked Persons)リストに載っている者がいないか確認している。
  • 取引先から、「業務上使っているルーターやスマートフォンに特定のメーカーの製品を使っていないか」と確認されたので対応した。

 これらはいずれも、「情報」「データ」を巡る各種の規制によって新たに生まれた業務で、適切に対応できなかった場合、会社が法的な制裁を受けたり、その国のビジネスを失ったり、あるいは社会的な制裁を受けたりする危険があります。

 経済安全保障は国民を守るために国家が主導します。海外の国々と協調したり、駆け引きをしたりして、それが国と国との約束となり、世界の枠組みとして機能します。そうした国と国との枠組みの中で、国家は国内向けに法律や各種規制を策定します。企業が経済安全保障に向き合うとは、こうした法律や各種規制を守るということです。LINE事件は法律違反ではなかったにもかかわらず行政指導を受けましたが、それは、当時の法律や規制に経済安全保障の見地から不備があったということであり、今後、法改正や各種規制が強化されると考えるべきです。