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 今も昔も、コスト削減は重要な経営課題。材料費などの経費を見直したり作業現場での無駄をなくしたりと、企業はあの手この手で取り組んでいる。ところが不思議と、大きな効果が得られる部品数削減に着手する企業はあまり見当たらない。

 かつて、経営危機に陥ったいすゞ自動車は部品の種類数を100万点から30万点に激減させて、見事再建を果たした。そのときの部品数削減活動の陣頭指揮を執った伝説の技術者・佐藤嘉彦氏が、経営者や管理者、技術者向けに『部品数マネジメントの教科書』を書き下ろした。

 本連載では、佐藤氏が開発した比較分析法「テアダウン(Tear Down)」を現場で実践しながら、長年交流を深めてきた盟友であるKSバリューコンサルティングの坂本幸一氏が、やはり現役時代に大なたを振るった部品数削減活動の体験談を明かす。第3回は、知らず知らずのうちに無駄な部品を生んでいる現実を語る。(技術メディアユニットクロスメディア編集部)

 部品数削減活動で直面する“表通り”と“路地裏”。まず、表通りとは、設計者が製品の魅力を高めるために魂を込めて設計する領域のこと。しかし見方を変えると、それに与えられた部品番号(部番)ですら、削減されるべきものが数多くあります。

 これに対して路地裏とは、表通りから外れたところで設計者が無意識のうちに(罪の意識を持たずに)無駄な部品を生み出してしまう領域のこと。佐藤嘉彦さんも指摘しているように、「設計者は常に新しいモノを求めている」からこそ、表通りの部品だけではなく、路地裏の部品も設計してしまいます。実は、これが意外に多く、削減の大きな対象となるのです。

図1 設計者が罪の意識なく生み出す無駄な部品
図1 設計者が罪の意識なく生み出す無駄な部品
(出所:筆者)
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 図1を見てください。左側の灰色の台形の部分が無意識のうちに生まれた無駄な部品です。具体的にどのような部品があるのか、次の図2に示しました。大きくは4つあります。

図2 路地裏で生まれる部品の内訳
図2 路地裏で生まれる部品の内訳
(出所:筆者)
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