日本のデジタル医療市場は成長を続けています。世界に目を向ければ、さらに巨大な市場が広がっています。
では、国産のデジタル医療製品にはどのようなものがあり、世界的に見て、どの程度の実力なのでしょうか。本書の著者である髙尾洋之医師は、それを最もよく知る人物の1人です。東京慈恵会医科大学の医師として数々の医療用製品の開発をけん引し、デジタル医療分野のリーダーとして活躍しています。
例えば、スマホで利用できる医師間コミュニケーションアプリ「Join」は、日本国内だけでなく、フィンランド、スウェーデン、ブラジル、サウジアラビア、マレーシアなど、既に多くの国に展開しています。このアプリは世界中のAI(人工知能)と連携する機能を持つなど、技術面でも最先端です。
コロナ禍の感染予防において、国は入国者に対し指定施設などでの一定期間の待機を求めています。待機期間中は入国者とコンタクトをとる必要があり、多いときは毎日数万人にも上り、とても通常のやり方で処理できる数ではありません。そこで活躍しているのが「MySOS」です。これも筆者が開発に関わった国産医療アプリです。
そんな筆者を、2018年、末梢(まっしょう)神経が侵される「ギラン・バレー症候群」が襲います。4カ月の間意識を失っていましたが、今は徐々に回復してきています。筆者は今もベッドの上で活動を続け、ITツールを駆使してその成果をまとめています。本書はその一環です。
日本の医療のために今も奮闘を続ける筆者のエネルギーを感じ取ってもらいたい。本書は、デジタル医療の最前線を知るのにふさわしい1冊です。
著者●髙尾洋之/定価●1760円(10%税込み)/発行●日経BP/判型●四六判264ページ/発行日●2022年3月28日/ISBN978-4-296-10006-4