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 日経コンピュータによる書籍『ポストモーテム みずほ銀行システム障害 事後検証報告』(日経BP)が2022年3月に発売された。2021年2月からの12カ月間に11回ものシステム障害を発生させたみずほ銀行。一連の障害の原因や背景を、日経コンピュータが全力で検証・解説した書籍だ。第1章では独自の取材を基に11回の障害を振り返っている。抜粋の第4回を掲載する。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)

 みずほ銀行は2021年3月1日の18時から東京・大手町のオフィスでATMトラブルに関する記者説明会を開催。藤原弘治頭取や片野健IT・システムグループ副グループ長、清水英嗣事務企画部長が謝罪すると共に、トラブルの経緯などを説明した。

みずほ銀行が2021年3月1日に開いた記者会見の様子
みずほ銀行が2021年3月1日に開いた記者会見の様子
(出所:日経クロステック)
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 「ご迷惑、ご不便をおかけしたお客様や社会の皆様に深くおわび申し上げます」。藤原頭取が記者会見でこう謝罪した。

 その2日後の2021年3月3日、金融庁はみずほ銀行に対して、銀行法に基づく報告徴求命令を出し、システム障害が発生した経緯や原因について報告するよう求めた。

 しかしその日の夜、みずほ銀行はまたしてもシステム障害を起こした。再びATMが通帳・カードを取り込み始めたのだ。

 2回目のトラブルが始まったのは3月3日の19時58分で、それからの3分間で29件の通帳・カードがATMに取り込まれた。夜間だったので営業店に行員は既にいない。警備会社の警備員や行員が急きょ駆けつけたり、ATMセンターからATMを操作したりして通帳・カードの返却を試みたが、当日中に返却できたのは14件にとどまった。残り15件の返却が完了したのは3月8日のことだった。

 3月3日はATMトラブルと同時に、みずほダイレクトやATMにおける宝くじ「ナンバーズ」の購入取引が不成立になるトラブルも発生している。

「みずほe-口座」への切り替えを延期

 みずほ銀行は2021年3月5日、通帳を発行しないみずほe-口座への自動切り替えを延期すると発表した。前述の通り2月28日に発生したシステム障害は、1年以上通帳への記帳がない定期預金口座を、みずほe-口座へと一括で切り替える作業中に発生した。それを受けての対応だった。

 みずほ銀行は、1年間以上にわたって記帳のなかった約1158万件の流動性預金口座(普通預金口座など)についても、みずほe-口座に自動的に切り替える考えだったが、これも見送った。

 みずほ銀行は1年以上記帳がない預金口座について紙の通帳を廃止することで、年間16億円の印紙税を節約できると見込んでいた。システム障害によって、紙の通帳に関するコストを削減するもくろみは潰えた。