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 かつて、経営危機に陥ったいすゞ自動車は部品の種類数を100万点から30万点に激減させて、抜本的なコスト削減を実現し、見事再建を果たした。そのときの部品数削減活動の陣頭指揮を執った伝説の技術者・佐藤嘉彦氏が、経営者や管理者、技術者向けに『部品数マネジメントの教科書』を書き下ろした。

 本連載では、佐藤氏が開発した比較分析法「テアダウン(Tear Down)」を現場で実践しながら、長年交流を深めてきた盟友であるKSバリューコンサルティングの坂本幸一氏が、やはり現役時代に大なたを振るった部品数削減活動の体験談を明かす。第7回からは、近似部品や重複部品の発生を防ぐための具体的な取り組みが始まる。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)

 この連載の第6回までで、部品が増える原因として、部品番号(部番)の付け方と採番台帳の管理の仕方について、問題点を明らかにしました。実は、もう一つ、設計の現場にはくせ者が潜んでいます。「多品一葉図面」です。

 読者の皆さんも、設計の過程で標準(規格)部品のようにまでは公認されてはいないものの、整然とシリーズ化された部品に出合うことがあると思います。気の利いた設計者が新たにそのような部品を採用し図面化する際、シリーズ化された部品群についても部品番号と特性をマトリックス表に整理して、1枚の図面の中に描くことがあります。これが多品一葉図面で、シリーズ化した部品群をグループ内で周知し共有できる利点があります。

気の利いた設計者の配慮が逆効果に

 これはこれですばらしいことなのですが、問題は前述したようにグループをまたがって情報が共有されていない点。「A」「B」「C」「D」の各グループがシリーズ化した部品群を記載した多品一葉図面を描くとしましょう。すると、のように、車種の特性の違いによって、各部品群のカバー範囲は少しずつズレます。

図 ともすると重複部品を大量生産してしまう多品一葉図面
図 ともすると重複部品を大量生産してしまう多品一葉図面
(出所:筆者)
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 とはいえ、共通する範囲は当然存在します。それが、の重なった範囲で、ここがすべて重複部品となります。先に述べたように、グループごとに異なった部品番号を採番していますから、シリーズ化した部品群を記載した多品一葉図面を描くことにより、重複部品が大量生産されてしまうのです。

 皮肉なことに、重複部品を生み出す多品一葉図面を作図した設計者のサインを見ると、すべてが現在の設計部門を動かしている上位の管理者でした。当時、利発な若手の設計者であった自分たちが周りに役立とうと、良かれと思って作った多品一葉図面がまさか無駄部品を大量生産していたなんて、ゆめゆめ考えもしなかったことでしょう。無意識下に生み出される無駄部品の最たる例です。