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 日経コンピュータによる書籍『ポストモーテム みずほ銀行システム障害 事後検証報告』(日経BP)が2022年3月に発売された。2021年2月からの12カ月間に11回ものシステム障害を発生させたみずほ銀行。一連の障害の原因や背景を、日経コンピュータが全力で検証・解説した書籍だ。第1章では独自の取材を基に11回の障害を振り返っている。抜粋の第5回を掲載する。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)

 2021年2月以降に続発したシステム障害を踏まえて、みずほフィナンシャルグループ(FG)は同年6月15日に、第三者委員会による調査報告書やシステム障害に関する役員処分、システム障害の再発防止策などを発表した。調査報告書によって、みずほ銀行の行内における実態が明らかになった。

みずほフィナンシャルグループは2021年6月15日にWebサイトで調査報告書を公表した
みずほフィナンシャルグループは2021年6月15日にWebサイトで調査報告書を公表した
(出所:みずほフィナンシャルグループ)
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 世間を驚かせたのは、システム障害に対する感度の鈍さだ。前述のとおり、みずほ銀行の藤原弘治頭取は2021年2月28日、システム障害の発生から3時間40分後に、インターネットのニュースでその事実を知った。みずほ銀行のATMセンターは2月28日10時15分に、みずほ銀行の関係各部署にATMトラブルの発生をメールで連絡していたが、みずほ銀行が行員に対して緊急出社を命じ始めたのは14時25分のことだった。そうした事実もこの調査報告書で初めて明らかになった。

 またみずほ銀行では2018年6月にも、ATMが通帳やカードを1821件取り込む事件が発生していた。その時点でみずほ銀行がATMに関するシステム仕様を改めていれば、2月28日のトラブルはもっと小規模で収まった可能性がある。しかしみずほ銀行は2018年6月のトラブルについて、社外に公表していなかっただけでなく、改善策の検討すらしていなかった。

11人の役員を処分

 役員処分に関しては、みずほFGの坂井辰史社長を含む計11人の役員に対して報酬減額の処分が下された。みずほリサーチ&テクノロジーズの役員も2人が報酬減額になった。この処分が発表される直前には、みずほ銀行の藤原頭取がシステム障害の責任をとって退任するとの報道もあったが、この時点では退任する役員はいなかった。

 再発防止策で注目されたのは、外部人材の採用だ。この時にみずほ銀行は、7月1日付で日本IBM出身の林勇太氏がみずほ銀行の「IT・システムグループ副グループ長」に就任すると発表した。みずほFGの坂井社長は6月15日の記者会見で、IT・システムグループの副グループ長を「副CIO」と表現している。

 第三者委員会は、今回障害を起こしたみずほ銀行の勘定系システムである「MINORI」について「構造、仕組み自体に欠陥があったのではなく、これを運用する人為的側面に障害発生の要因があった」と結論づけた。そのためみずほ銀行もMINORIを抜本的に改めるのではなく、システムの運用を改善することで障害の再発を防ぐ方針とした。その運用改善に日本IBM出身の林氏が副CIOとして参加するという構図だ。