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 日経コンピュータによる書籍『ポストモーテム みずほ銀行システム障害 事後検証報告』(日経BP)が2022年3月に発売された。2021年2月からの12カ月間に11回ものシステム障害を発生させたみずほ銀行。一連の障害の原因や背景を、日経コンピュータが全力で検証・解説した書籍だ。第1章では独自の取材を基に11回の障害を振り返っている。抜粋の第6回を掲載する。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)

 2021年8月以降に、再びみずほ銀行でシステム障害が頻発し始めたことに金融庁は危機感を強めた。実はみずほ銀行はシステム障害が再発する中でも、以前から予定していたシステムの改修作業を強行しようとしていたからだ。インターネットバンキングのみずほダイレクトで使用するスマートフォン用アプリケーションの全面刷新がその一例で、9月中の実施を計画していた。

金融庁が出した行政処分
金融庁が出した行政処分
(出所:金融庁)
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 むやみにシステム改修を進めては、新たなシステム障害が発生しかねない。そう考えた金融庁は2021年9月22日、みずほ銀行とみずほフィナンシャルグループ(FG)に対して業務改善命令を発出し、当面のシステム更改や更新の計画について再検証や見直しを命じた。みずほ銀行によるシステム改修に全面的なストップをかけた格好だ。

金融庁が計画見直しを命令

 みずほ銀行に対しては、システム改修に関して見直した計画を2021年10月29日までに報告するよう命じた。10月末までに行う必要があるシステム改修については、10月6日までに計画を提出するように求めてもいるため、緊急的な改修までは禁じていない。しかしそれ以外の改修については、金融庁がチェックするまで実施を禁止した。

 金融庁は同時にみずほ銀行に対し、再検証した上でも実行すべきだと考えたシステム改修については、その改修によって障害が発生した場合に顧客に対して適切な対応ができる危機管理態勢を確保するように命じている。これまでのシステム障害が発生した際のみずほ銀行の対応について、金融庁が強い不満を持っていることがうかがえる命令だ。

 この時点で金融庁は、みずほ銀行への検査を継続している。検査中にもかかわらず業務改善命令を下すのは異例の対応だった。

またまた発生したシステム障害

 みずほ銀行の情報システム部門は、実質的に金融庁の管理下に入った。IT業界人がそのような見立てをする中で、2021年9月30日に8回目のシステム障害が起きた。

 3月12日、8月20日に続き、今回も外国為替の送金が遅延した。国内他行向け外為送金のうち370件が時限に間に合わなかった。未処理となった送金の多くは、送り先の銀行と調整して当日扱いで処理できたが、最終的に59件が当日中に処理を終えられなかった。

 しかし9月30日のシステム障害で発生した最悪のトラブルは、外為送金が遅れたことではなかった。この時、みずほ銀行はシステム障害によって遅れが生じていた外為送金を時限に間に合わせるために、外国為替及び外国貿易法(外為法)が銀行に義務づけているマネーロンダリング(資金洗浄)に関するシステムによるチェックを省略して送金を実行していたのだ。