日経コンピュータによる書籍『ポストモーテム みずほ銀行システム障害 事後検証報告』(日経BP)が2022年3月に発売された。2021年2月からの12カ月間に11回ものシステム障害を発生させたみずほ銀行。一連の障害の原因や背景を、日経コンピュータが全力で検証・解説した書籍だ。第1章では独自の取材を基に11回の障害を振り返っている。抜粋の第7回(最終回)を掲載する。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)
みずほ銀行はシステム障害の再発防止策を見直す中で、さらにシステム障害を重ねた。
9回目のシステム障害は、2021年の最終営業日だった12月30日の15時30分に始まった。顧客がATMやインターネットバンキングなどで依頼をした他行への振り込みが、相手先の口座に届かない事態が16時25分まで発生したのだ。
国内銀行間の振り込みは「全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)」を介して送信される。この時は全銀ネットに振り込み情報を送信する際の設定を誤り、振り込み情報が全銀ネットに届かなくなった。その数は約2700件。そのうちの約2400件については、その日のうちに全銀ネットに再送信した。しかし残りの約300件については、全銀ネットへの送信処理が12月30日中に終わらなかった。
2022年初にも発生したシステム障害
10回目のシステム障害は、2022年1月11日に発生した。法人顧客向けのインターネットバンキングである「みずほe-ビジネスサイト」が8時のサービス開始から11時33分までの間、つながりにくい状態になったのだ。
みずほ銀行は法人顧客に対して電子メールなどで、ATMや店頭を利用するよう呼びかけた。その電子メールには他の金融機関の利用を検討するよう要請する内容も含まれていた。
みずほ銀行では2020年11月30日にも、みずほe-ビジネスサイトが9時過ぎから10時ごろまでつながりにくくなるシステム障害が発生している。それから1年1カ月後に、同一サービスで同種のシステム障害が発生したわけだ。
みずほフィナンシャルグループ(FG)とみずほ銀行は2022年1月17日に、システム障害についての新しい再発防止策を金融庁に提出し、合わせて一般にも公表した。その詳細は本書『ポストモーテム みずほ銀行システム障害 事後検証報告』の第7章で解説するが、2021年6月に発表した再発防止策は52項目で構成されていたのに対して、2022年1月の再発防止策は113項目にまで増えた。
またみずほFGは同日、坂井辰史社長の退任時期が4月1日付から2月1日付に早まり、みずほFGの木原正裕執行役グローバルプロダクツユニット長が2月1日付でみずほFGの新社長に就任すると発表した。坂井社長の退任が早まった理由についてみずほFGは「体調不良のため」と説明している。