かつて、経営危機に陥ったいすゞ自動車は部品の種類数を100万点から30万点に激減させて、抜本的なコスト削減を実現し、見事再建を果たした。そのときの部品数削減活動の陣頭指揮を執った伝説の技術者・佐藤嘉彦氏が、経営者や管理者、技術者向けに『部品数マネジメントの教科書』を書き下ろした。
本連載では、佐藤氏が開発した比較分析法「テアダウン(Tear Down)」を現場で実践しながら、長年交流を深めてきた盟友であるKSバリューコンサルティングの坂本幸一氏が、やはり現役時代に大なたを振るった部品数削減活動の体験談を明かす。第11回は、筆者が以前所属していた部署との連携で実践できた部品数削減のテクニックを具体的に解説する。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)
調達先に運用を任せきりで90種にも膨らんでいた、「コンパニオンフランジ」という部品。筆者の古巣である資材部門からの依頼を受け、それを整理整頓、合理化する目的で、我々部品共通化推進室は「バラエティ・リダクション・プログラム(Variety Reduction Program、VRP)」のテクニックの1つ、「固定」+「変動」を適用することにしました。
これを機に、コンパニオンフランジの種類数をカオス(混沌)状態からコスモス(整然)状態へと一気に改善することを狙います。そこで、まず、固定部分と変動部分を次のように設定しました。
- 固定部分:鍛造素材の種類を絞り込んで統合する
- 変動部分:1つの鍛造素材(固定部分)から数種類の図面形状に機械加工で仕上げる
いすゞ自動車が実践した思想と同じ
この考えは、書籍『部品数マネジメントの教科書』の著者である佐藤嘉彦さんがいすゞ自動車で実践していた「ベース+オプション戦略」と同じ思想です。筆者は当時、そのことを知らずにVRPに目をつけました。
さて、コンパニオンフランジはその許容トルクから、系列化された取り付けボルト穴のピッチごとに分類されています。この同じ分類(サイズ)の中で、似通ったもの同士をグループ化し、それらをすべて機械加工で削り出せるような「最小公倍数的な素材形状」を作図します。さらに、最小公倍数的な素材形状の中でも、似通ったものがあれば共通化を図るようにしました。
要は、共通化した最小公倍数的な素材形状が固定部分、そこから機械加工するところが変動部分となります。
固定部分と変動部分を整理
図を見てください。あるサイズのコンパニオンフランジを上述の「固定」+「変動」のテクニックで整理したものです。鍛造で成型する固定部分(左列)は4種、それをベースに機械加工で製造する変動部分(右列)は合計20種あります。つまり、全部で20種のコンパニオンフランジが製作可能であることがこの図から分かります。
以上のように整理されたデータから、鍛造素材と機械加工完成品とのつながりが明確になりました。それらの情報を、我々発注側と製作供給側の両社で共有できたことは大きなメリットでした。