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 プロ向け動画制作ツールのデファクトスタンダードである米アドビ(Adobe)の「Premiere Pro」が新しくなった。最新版ではUI(操作画面)の改良や人工知能(AI)「Adobe Sensei」を活用した自動機能の進化により、動画編集に不慣れなユーザーでも簡単に動画が作れ、面倒だった作業が省力化できるように改良された。映像クリエーターで『Premiere Proではじめるビジネス動画制作入門』(日経BP)の著者でもある森田勇人(OMOKAGETV)氏に盛り込まれた注目の新機能を紹介してもらった。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)

 プロ向け動画制作ツールのデファクトスタンダードである米Adobeの「Premiere Pro」が大きく進化している。

 最新版では長年動画制作者を悩ませてきた面倒な作業が大幅に省力化できるようになった。UI(操作画面)の改良や進歩、アドビ独自のAI(人工知能)「Adobe Sensei」の活用により、テロップの自動生成、BGMの自動調整、画像のアスペクト比の自動変換といった動画制作を楽にする機能が多数導入された。

 また最新バージョン(2022年5月リリースのバージョン 22.4)から導入された新しいUI(操作画面)は、慣れていないユーザーを意識して大幅に整理・改良され、動画制作を始めやすくなっている。一般のビジネスマンが動画の制作や配信を仕事として手掛けるようなケースで使う際の、動画制作のハードルが一層下がったといえる。

長年動画制作者を悩ませてきたテロップ入れが自動化

「音声テキスト変換」
「音声テキスト変換」
音声からテロップを自動作成できる(出所:Premiere Proベータ(2022)版の画面を著者がキャプチャー)
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 Premiere Proが2021年のアップデートで実装した「音声テキスト変換」は動画の音声から自動的にテロップを生成する機能だ。文字通り「ボタンを押すだけ」でPremiere Proが音声を文字化してその場面のテロップとして表示させる。

 カット編集とテロップ入れは動画制作で特に時間のかかる作業だった。とりわけテロップ入れは音声を聞きながら誤字脱字のないように文字起こしを行い、タイミングに合わせて編集して画面に表示する必要があった。あまりにも面倒なので字幕作成のみを代行で請け負う業者もあるほどだ。

 さすがに音声テキスト変換だけでテロップ入れ作業が完結するわけではない。テロップ内の一部の文字のみ色を変えるといった場合は編集作業が別途必要になる。音声認識の精度にも改良の余地はある。しかしこれまで手作業で行っていた多くの工程が、ボタンを押すだけで完了するのは間違いない。動画制作者にとっては救世主のような機能と言える。

 現状ではテロップの正確さが動画素材の音声のクオリティーに左右されるきらいはあるが、頻繁にアップデートが繰り返されて精度も徐々に高まっているため、ぜひ活用したい機能の1つだ。

動画の長さに合わせてBGMを自然に調整

オーディオリミックスで映像の長さに合わせてBGMを短くする
オーディオリミックスで映像の長さに合わせてBGMを短くする
(出所:Premiere Proベータ(2022)版の画面を著者がキャプチャー)
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 Adobe Senseiにより自動化されたのはテロップ入れだけではない。BGMの長さ調整も「オーディオリミックスツール」で自動化された。動画の長さに合わせてBGMの波形を分析し、自然な形でBGMの長さを自動調整してくれる。

BGMクリップ内の縦波線がリミックスされている箇所
BGMクリップ内の縦波線がリミックスされている箇所
(出所:Premiere Proベータ(2022)版の画面を著者がキャプチャー)
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 従来、BGMを動画に合わせて長くしたり短くしたりすると、BGMのバランスが崩れてしまうため、テンポに合わせてカットやフェードイン・アウト調整をやり直す必要があった。オーディオリミックスツールは動画の尺に合わせて自動でBGMをアレンジし直してくれるため、BGM編集に悩む時間が減る。ありがたい機能だ。

 ただし、筆者個人がいろいろ試してみたところ、この機能でBGMを長くすると、やや不自然になってしまうことが多かった。「オーディオリミックスツール」はBGMを短くする際に活用するのがお勧めだ。