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コミュニティーやイベントなど、人々を駆り立てる「着替えたくなる理由」をどうつくっていくかがポイントになりそうですね。

渡邊 近年は新型コロナウイルス禍ということもあり、「必ずしも現地に行く必要はない」という感覚が普通になりつつあります。だからこそ、アバターでのコミュニケーションも受け入れられやすいはずです。その感覚がさらに浸透してくると、例えば(バーチャル空間での)飲み会に行くときに「いつもと同じスーツのアバターで行くのは嫌だなぁ」と思うようになるかもしれません。そうした気持ちが芽生えた人は、300円とか500円のアバターの私服を買うようになりますし、もしかすると1000円以上出すかもしれない。

 そうした流れから、クリエーターへのキャッシュフローの成立や、クリエーターの育成、事業の成立などの議論に発展していけば、セカンドライフを超えてくると思いますね。

杉山 私は、若いときからコンピューターで3Dをずっと扱っていたから、どうしても最後は「そこの空間に行きたい」って思ってしまうんですよね。今は病気になって現実では歩けなくなったので、余計に早いところアバターになって、向こうに行って飛んだり跳ねたりしたいんですよね。

 高齢化が進むと、みんな100歳まで元気なわけじゃないから、そういうメタバースの利用価値も出てくると思います。そのとき、「若い頃の姿がいい」という人もいるでしょうし、逆に20歳くらいの子が100歳ぐらいの顔になりたいということもあるかもしれない。年齢や性別から自由になれるんですよね、メタバースは。

 ロシアのウクライナ侵攻などを見ていても思いましたが、やはり現実世界はすごく窮屈なんです。いろんなことがお互いに関連しすぎてしまっていて、自分勝手には生きていけない。そうした時代で、人々の一つの受け入れ先としてメタバースがあるのではと思います。

渡邊 あまり人には言っていませんが、私は女子アバターと男子アバターの両方を持っていて、女子アバターを使ってモデルとして活動していたんですよ。ファッションショーに出演して、それでお金をもらったりしていました。「現実ではできないことができる達成感」みたいなものはやっぱりありますよね。その価値観は今後ますます強くなると思います。

 これまでは中央集権的な雰囲気で、(中心に立つ人が)「これが正しい」と言ったら皆がそれに従わなければいけなかった。しかし今では、「僕はやらないけど、君がやっていることはいいと思う」と、それぞれの意見が分散化しつつあります。となると、やりたいことを実現する方法はたくさんあったほうがいい。

(続く)

(初出:『Mogura VR』2022年5月4日掲載、編集/ゆりいか、水原由紀、『日経クロストレンド』2022年6月13日掲載 メタバースは「セカンドライフ」の二の舞になる? 識者が対談 を再構成、固有名詞や肩書などは掲載当時のままで現在は変わっている可能性があります)

次回の『メタバース未来戦略』インタビュー

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 2021年10月、旧フェイスブックが社名をMeta Platforms(メタプラットフォームズ)に変更し、メタバース関連へ年間100億ドル(約1兆1400億円)もの投資を行うことを公言したことで号砲が鳴った「メタバース狂騒曲」。NFT(非代替性トークン)やWeb3(ウェブスリー)、デジタルツインなど、関連するバズワードが入り乱れる中、その「本質」と「真価」を見通すのは容易ではありません。

 結局、メタバースとは何なのか。仮想世界ではどのようなビジネスチャンスが生まれるのか。今からどうやって取り組んでいけばいいのでしょうか――。

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著者●絢斗優、藤本真衣(著)、馬渕邦美(著/監修)/定価●2420円(10%税込み)/発行●日経BP/判型●A5判248ページ/発行日●2022年7月26日/ISBN 978-4-296-11224-1

 「Web3とは何か?これから何が起きるのか?」。このような疑問を抱いている皆さんに一定の解を示す書籍です。Web3は現在進行形であり、変化のスピードが速いので、未来を見通すのはなかなか難しい。そこで本書はトップランナーたちのインタビューを通して、「これから何が起きるのか?」を読み解いています。Web3の巨大投資会社Animoca Brandsの創業者、Yield Guild Games (YGG)の共同設立者、メタバースDecentralandの創業者といった現在、Web3のムーブメントの中心にいる人たちに話を聞いています。

 Web3は、現在のWeb2.0の延長上にはなく、別の世界を目指しています。「絵に描いた餅」のようにいう懐疑派がいるのも当然で、Web3のトップランナーが目指す世界は、既存の尺度では測りづらく、リスクがあるのも確かです。一方でWeb2.0の反省を踏まえて世界を良くしていきたいとの意図を強く感じます。その範囲はあらゆる領域に及び、言うなれば「社会の再定義」をしようとしています。

 Web3が目指す世界を、ぜひ自分の目で確かめてください。