書籍『誰も教えてくれなかったアジャイル開発』(日経BP)では、ウオーターフォール型開発が主流の「日本企業」で試行錯誤しながらアジャイル開発を成功に導いてきたコンサルタントたちが、自らの経験を体系化している。本書から抜粋し、実践的にアジャイル開発のポイントを紹介する。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)
本書『誰も教えてくれなかったアジャイル開発』の「基礎編」では、アジャイル開発とウオーターフォール型開発の特性を比較しながら、アジャイル開発の経験が少ない日本企業が組織や文化を大きく変革せずにSoR(System of Record)領域の業務システムのアジャイル開発を成功させるうえで、理解しておきたい基礎的なポイントを解説した。続く「実践編」では、実際のアジャイル開発プロジェクトを運営する現場で必要となる項目に焦点を当てて、より詳細に掘り下げて解説していく。
実践編の第1章では、プロジェクトの企画段階において注意したい7つのポイントを解説する。経験上、いずれもやりがちで、し損じればプロジェクトの失敗に直結する内容だ。
アジャイル開発に限らずどのようなプロジェクトでも、企画段階での検討やステークホルダー(プロジェクトに関わる利害関係者)との合意形成が不十分なままではその後のプロジェクトのかじ取りが困難になる。一度与えてしまった誤解を解くには当初の説明の何倍もの時間と労力が必要となるからだ。
大切なのは、開発の開始前に、ポイントを絞って検討と合意を積み上げていくことである。それでは7つのポイントを見ていこう。
ポイント(1) 「アジャイル開発の理解」は相手により濃淡を付ける
ポイントの1つ目はアジャイル開発の「理解」に関するものだ。
基礎編の第1章でも述べたがアジャイル開発にはまだ誤解も多い。そうした中で、アジャイル開発プロジェクトの最初の難関は、全てのステークホルダーにアジャイル開発を理解してもらうことと考える人が多いことだ。全員から理解を得る難しさの前に、アジャイル開発の採用を諦めてしまった人もいるだろう。
ただ実際には、全ステークホルダーからアジャイルについて完全な理解を得る必要はない。肝は相手に合わせて濃淡を付けた効率的な説明にある。