全2021文字

 書籍『誰も教えてくれなかったアジャイル開発』(日経BP)では、ウオーターフォール型開発が主流の「日本企業」で試行錯誤しながらアジャイル開発を成功に導いてきたコンサルタントたちが、自ら経験を体系化している。本書から抜粋し、アジャイル開発のポイントを紹介する「実践編」から、前回に続いてポイント(5) 「やること」よりも「やらないこと」をまず決める、を掲載する。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)

ポイント(5) 「やること」よりも「やらないこと」をまず決める

 ポイントの5つ目は、インセプションデッキの4つ目の設問・課題「やらないことリストを作る」に関するものだ。

インセプションデッキの10個の設問と課題
インセプションデッキの10個の設問と課題
(出所:『アジャイルサムライ―達人開発者への道』〔Jonathan Rasmusson著、西村直人・角谷信太郎監訳、近藤修平・角掛拓未訳、オーム社、2011年〕の46ページを参考にシグマクシス作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 やらないことリストとは、これからシステムを構築するうえで、それぞれの機能やタスクに関して「やる」「やらない」「後で決める」ことを明確にするために使う一覧表である。

図 やらないことリストの記述例、「やらないこと」は必ずステークホルダーと握っておく
図 やらないことリストの記述例、「やらないこと」は必ずステークホルダーと握っておく
(出所:シグマクシス)
[画像のクリックで拡大表示]

 「やらないことリスト」に挙げる内容には機能やタスクを書く。挙げるものの粒度は特に問わない。具体的な「〇〇参照機能」でもよいし「ツールの導入」のような大きなタスクでも構わない。プロジェクト関係者全員で考えてリスト化してスコープを切り分ける。

 リスト作成に際して最も重要なのが、「やらないこと」を必ずステークホルダーとPO(プロダクトオーナー)・PPO(代理プロダクトオーナー)が合意することである。合意しておかないと「それを当然やると思っていた」といった食い違いが生じ、検討や優先順位の見直しなどにつながりかねない。「やらないこと」をやることは、「やること」をやらないことよりも骨が折れる。

 なぜ「やること」リストではなく「やらないこと」リストなのか。あえて「やらないこと」を挙げるメリットは3つある。