『それでは伝わらない!ビジネスコミュニケーション新常識 デジタルグローバルな作法は若者に学べ』はグローバルな取引や協業が当たり前になり、オンライン会議やビジネスチャット、コラボレーションツールといった新しいITツールを普通に利用するようになった今どきの「ビジネスコミュニケーション」のあり方を解説した書だ。ビジネスコミュニケーションを円滑に進める手法は従来と変わっており、その「常識」はキャリアパーソン世代のそれとは大きく違うと説く。著者のディレクトリジャパンの西原勇介氏に、執筆のねらいを聞いた。(聞き手は松山貴之=技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)
「ビジネスコミュニケーション」にテーマした本なので、若手のビジネスパーソンにマナーを教える本かと思ったら、そうではないようですね
西原勇介氏 はい。もちろん若者にも読んでもらいたいですが、想定読者は部下を抱えるキャリアパーソン世代です。「どうも最近の新入社員とうまくコミュニケーションが取れないな」と感じている人をイメージして書きました。若者がSNSを利用しているのは知っているが本人はあまり興味を示さず、若者に対して「オフでSNSを利用するのはいいけど、社会人なんだから、ちゃんとビジネスコミュニケーションを身に付けてくれよ」と思っている、そういう人です。
実は「若者コミュニケーションはなっとらん」と思っているキャリアパーソン世代向けに書かれている本なのですね
西原氏 でも実は、「なっとらん」のは若者ではなく、SNSに興味を示さないキャリアパーソン世代の方です。ビジネスコミュニケーションの常識は変化しています。その新常識の特徴と、若者コミュニケーションの特徴は同じだと分かりました。それは偶然の一致ではなく、必然です。
今のビジネスシーンを見渡しても、若者が友人と雑談する際に使うチャットがビジネスチャットに進化し、若者が友人と日常を共有してコメントし合うサービスがチームコラボレーションツールに進化しています。若者の遊びの体験がビジネスコミュニケーションに大きく影響を及ぼしているのです。
こうした変化に、キャリアパーソン世代は目を向けなければなりません。
若者コミュニケーションがビジネスコミュニケーションを侵食しているのですか?
マイクロソフトが史上最高額でゲーム会社を買った理由
西原氏 侵食というより、標準として採り入れられている、と言った方がいいかもしれません。
最近、米マイクロソフトがゲーム会社(アクティビジョン・ブリザード)を買収しましたが、その理由の1つは、将来メタバースとして提供予定のオフィス・プラットフォームのためと言われています。仮想空間で仕事をする際、どのようなコミュニケーションスタイルが最適なのか、それは、日常的にゲームを利用する若者を観察すべきだと考えているのです。将来のビジネスパーソンの主流は今の若者ですから、彼ら/彼女らが使いやすいと感じる方向に、オフィス・プラットフォームを進化させようとしているのです。
マイクロソフトはみなさんご存じの通りオフィス向けITツールを開発・提供する世界的な企業です。コミュニケーションスタイルはツールの影響を大きく受けるので、次世代ビジネスコミュニケーションの特徴が若者コミュニケーションの特徴と同じなのは必然というわけです。