グローバル企業の幹部84%が「AI(人工知能)の幅広い活用はビジネス戦略に不可欠である」と考えている。その一方で「AI機能を備えた組織の構築を実現している」企業はわずか16%に過ぎない。しかしこの16%の企業は、その他の企業と比べて3倍近い投資対効果を得ている。AIを活用できる企業とそうでない企業の格差は広がる一方だ。データ・AIを活用できている企業には、どういった特徴があるのだろうか? 実例ベースの組織変革方法を、アクセンチュアのAI部門責任者、保科学世氏が解説した『データドリブン経営改革』(日本経済新聞出版)から抜粋・再構成してお届けする。(日経BOOKプラス編集部)
データ活用の4つのステージ
あなたの企業は、データ活用、AI活用においてどのステージにいるだろうか?
ステージ0:KKD(勘・経験・度胸)で業務を遂行する組織
ステージ1:データの集計と可視化をしている組織
ステージ2:統計的な分析結果を活用している組織
ステージ3:AIを活用した組織
それぞれのステージがどのようなステージなのか、具体的に見ていこう。
◆ステージ0:KKD(勘・経験・度胸)で業務を遂行する組織
データがそもそも蓄積されていない、または蓄積されているが活用可能な状態になく、データに基づく業務がなされていない組織。
勘・経験・度胸で業務を遂行しているため、このステージにある組織はデータ活用の余地が非常に大きい。
◆ステージ1:データの集計と可視化をしている組織
ビジネス上発生する各種のデータが蓄積され、データを可視化した上で、そのデータに基づいて業務を遂行している組織。
KKDからの脱却という意味では、大きな一歩を踏み出している。ただ、現状を可視化した段階で、数値の裏にある背景の理解や、KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)と個々のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、結果としての数字が見えているにすぎない。
◆ステージ2:統計的な分析結果を活用している組織
蓄積されたデータを基に、統計的な分析も組み合わせながら、現状のビジネス課題の原因と対策を分析し、その分析結果を業務に活かしている組織がこのステージだ。
単なるデータの可視化に留まらず、背景や各種データ間の相関まで見ることで、現状を正しく理解し、適切なアクションを実行できる状態にある。
ただし、AI技術までは活用できていないため、予測精度自体は高いとは言えず、さらに目標を達成するために、例えばどのタイミングでどの商品をいくらで売るのが最も利益が大きいのか、といった最適化計算をリアルタイムで実施するまでは難しい。
◆ステージ3:AIを活用した組織
データやAIを活用しながら将来の予測を実施し、予測に基づいた業務最適化がなされている組織がこれにあたる。
さきほどの例で言えば、最も利益率が上がる価格設定の仕方を計算したり、最適な発注を機械が自動で行ったりする状態だ。
このステージにある企業は、データの蓄積から力を引き出す仕組みまでは整備されており、あとはそのデータからAIの業務活用までの流れを、より幅広い業務範囲で全社にスケールできるかどうかが問われる。