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『データドリブン経営改革』
『データドリブン経営改革』

 グローバル企業の幹部84%が「AI(人工知能)の幅広い活用はビジネス戦略に不可欠である」と考えている。一方で「AI機能を備えた組織の構築を実現している」企業はわずか16%。だがこの16%の企業は、その他の企業と比べて3倍近い投資対効果を得ている。調査データを見ても日本の企業では、KKD(勘・経験・度胸)を優先する傾向が経営者ほど強い。直感を正しい判断に結びつけるためにどうしたらよいのか。実例ベースの組織変革方法を、アクセンチュアのAI部門責任者、保科学世氏が解説。『データドリブン経営改革』(日本経済新聞出版)から抜粋・再構成してお届けする。(日経BOOKプラス編集部)

経営者はデータ活用をできていない?

 あなたの会社の経営者は、正しくデータを活用しているだろうか?

 残念ながら、日本企業の経営者はデータ活用ができていないことをうかがわせる調査結果がある。

 データ主導型のインサイトと自らの直感、どちらを優先するかを問う調査が行われた(Qlik&Accenture「データリテラシーによる人への影響」)。

 この調査では、「自らの直感」を優先する割合が、下位役職(下位管理職、ジュニアマネジャー)では41%であったのに対して、上位役職(最高責任者、シニアマネジャー、重役)では67%という結果が出た。

 上位役職者の方が一般管理職より直感を優先する、しかもその割合は7割近くに達するというのだ。

(出所:『データドリブン経営改革』)
(出所:『データドリブン経営改革』)
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 つまり、現場よりも経営陣の方が、より直感を優先する傾向があることが示唆されている。これはある意味、理解できる結果かもしれない。成功体験をより多く蓄積してきた人が上位役職に就くので、自らの経験・直感に頼る傾向が高いのではないだろうか。

 しかし、その成功体験の多くは、現時点より低いポジションで得られた経験、すなわち、自らの目が届く狭い範囲で積み上げられた成功体験であり、広範な〝直接目の届かない〞範囲も含めて統括する現在のポジションにおいては、直感での判断はリスクが高い。

 さらに、過去の成功体験は、現在とは全く異なる環境で得た経験である場合が多い。ビジネス環境が急速に変化する中で、自らの直感をどこまで信じてよいのか、いま一度経営陣は考えてみてほしい。

 客観的なデータはデータとしてしっかりと目を通し、AI(人工知能)による解析結果も活用した上で、自らの経験も踏まえて総合的に判断することが望ましいのは言うまでもない。

「ベストプラクティス」よりも「正しい失敗」を

 もちろん、手元にあるデータだけで全てが決まるわけではなく、優れた経営者の持つ、優れた〝直感〞も必要になる。ただ、本当に優れた経営者は、〝データ〞をしっかりと見た上で、そのデータと自らの〝直感〞をうまく組み合わせて総合的に経営判断を下しているという印象を筆者は持っている。

 日本はまだ、アメリカと比べて経営陣の目線が社内に向いており、配下の部長陣等に〝忖度〞(そんたく)し、社内調和を重視しながら経営しているように見える。これはこれで良い面もあるが、客観的なデータに基づくべきところは基づいて経営判断をすべきだろう。

 そして今後は、よりアメリカ型、すなわち外部メンバーも含めた取締役を意識した経営への転換が進むと予想されるが、その時に必須となるのがまさに、データドリブンな経営だ。

 データや、さらに新しい技術であるAIを活用してどのように経営判断を行うべきか。また、AIのような新しい技術を活用する場合、何を自社で持ち、何をアウトソースするのか。それらの判断も経営陣の重要な意思決定ポイントだ。