全3596文字
PR
『ダイナミック・サプライチェーン・マネジメント レジリエンスとサステナビリティーを実現する新時代のSCM』
『ダイナミック・サプライチェーン・マネジメント レジリエンスとサステナビリティーを実現する新時代のSCM』

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)やロシアによるウクライナ侵攻など予想もしなかった出来事が次々に起こる不確実性(VUCA、ブーカ)の時代が訪れている。これらによりグローバルでのサプライチェーンを巡る状況は一変した。これまで機能していた物流網は機能不全に陥り、ものが買えない、作れない、運べない状況に対して、有効な打ち手を失っている企業も多い。これからのSCM(サプライチェーン・マネジメント)はどうあるべきなのか。『ダイナミック・サプライチェーン・マネジメント レジリエンスとサステナビリティーを実現する新時代のSCM』(日経BP)の著者であるクニエ SCMチームに、新時代に求められる「ダイナミックSCM」について連載してもらう。連載第7回はダイナミックSCMへの転換を阻む、デジタル面の遅れ、組織・人材の問題点を解説する。

 本連載で説明している「ダイナミックSCM」を実現しようにも、現場には問題が山積している。今回は、デジタル面、組織・人材面の問題点を整理する。

デジタル面の問題:複雑なレガシーシステムやマニュアル業務

 経済産業省の『DXレポート』では、企業のDXの阻害要因としてレガシーシステムの問題が「2025年の崖」として指摘されている。SCM構築においてもレガシーシステムの存在は非常に大きな問題だ。特に歴史が長く、大企業であればあるほど阻害度合いが大きい。同レポートによると、日本企業はDXに乗り遅れ、2025年から年間12兆円の経済損失が生じる恐れがあると報告されている。長年の現場改善でつくり込まれたレガシーシステムは複雑化し、年数がたって中身を正確に把握できている人がいないという事態が発生している。

 特にモノの動きを伴う実行部分に関連するレガシーシステムは、その時々の状況により、改善を積み重ねて変更を繰り返している場合が多い。昔は使われていたシステム機能も、現在は使われていないなど、まずその棚卸しから必要になる。現場IT担当者は、個々の機能については詳しいが、その相互の関連性までは理解していないため、影響を調査するだけでも多大な工数が必要となる。その結果、業務変化などに応じてレガシーシステムを改造することが困難となり、レガシーシステムはそのままで、人間が代替しなければならなくなる。

 一方で、将来のサプライチェーン計画の立案やシナリオに基づくシミュレーションなど、意思決定に関連する業務は、いまだにExcelを活用したマニュアル業務が多い。状況変化の激しい計画業務は標準化しにくく、柔軟に業務を回すためにExcelが多く使われている。Excelは柔軟であるが、属人化しやすく、業務間で共有して使うことには向いていない。相互連携では電子メールのバケツリレーなどが行われており、データをつなぐ障壁になっている。Excelバケツリレーは、部署や個人でデータを閉ざしてしまい、サイロ化した個別業務となる。サプライチェーン全体のデータを収集しようとした場合、電話やメールといった手段を多用し、収集だけで工数が多くかかる。部署や個人で閉ざされたデータは、粒度や鮮度が異なり、再利用することを困難にしている。

 また、計画立案や分析に必要な情報定義が不十分といったことも多い。グローバルに展開している企業であれば、グローバルに同じ定義の情報を使うことが必要である。しかしながら、現実には業務プロセスやルール、ITシステムの仕様などにより、言葉としては同じでも意味が異なるデータが存在してしまう。よって、サプライチェーン全体の正確な可視化が非常に困難になっている。