みんなの銀行の基幹システムは、クラウド上にフルスクラッチ開発されている。その開発はどのように進んだのか。『イノベーションのジレンマからの脱出 日本初のデジタルバンク「みんなの銀行」の軌跡に学ぶ』(日経BP、2023年)から抜粋し、SIerとして開発に参画したアクセンチュアの山根圭輔氏と経緯を振り返る連載の最終回。聞き手はみんなの銀行 執行役員CIOの宮本昌明氏。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部、本文中敬称略)
みんなの銀行 宮本昌明(以下、宮本) ところで、みんなの銀行開業までで、これまでにお話が出ていないところで厳しかったなと思うポイントはどのあたりですか?
フルボッコにされ、ミーティング中に呼吸困難で倒れる
アクセンチュア 山根圭輔氏(以下、山根) まだまだたくさんあります。例えばMVP(Minimum Viable Product)2の見積もりの時に自分は心労がたたって倒れたんですよ。呼吸困難になってしまいまして。ミーティングの最中でした。このときはつらかったですね。
宮本 そのときのご心労とは、どのようなことだったのですか?
山根 見積もりです。見積もりの根拠ですね。開発の責任者でありながら新銀行の事業計画やその収支計画も理解していました。一方、開発したソフトウエアを使用環境のシステムで、インストールやデプロイが可能なデリバリーでやるなら当然工数がかかるなどという事情もはしょるわけにはいきません。
そのぎりぎりのところで、最大の振れ幅として開発コストが1.5倍になる可能性がありますのでこれくらいを見ておいてください、と言って超概算見積もりを提案していました。しかし1.5倍になりますと言えば、当然1.5倍にならずに済ませられる見積もりが見たいと言われます。
その点、横田さん(編集部注:現・みんなの銀行取締役会長の横田浩二氏)や永吉さん(編集部注:プロジェクトのリーダー、現・みんなの銀行 取締役頭取の永吉健一氏)に相当詰められまして。
その交渉をしているとき、一方ではiBankマーケティングの「Wallet+」(ふくおかフィナンシャルグループ公式ウォレットアプリ)のシステム面で別の課題が発生していました。さらに、そうこうしているうちに、みんなの銀行の一部機能の開発の遅れも重なり、私はフルボッコされる状態になったんです。