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『金融AI 成功パターン』
『金融AI 成功パターン』

 金融業務へのAI(人工知能)適用に関するノウハウを「パターン」として整理した『金融AI成功パターン』(日経BP、2023年)では、7つの基本パターンと、5つの上級パターンを紹介している。同書からさまざまな場面に適用できるノウハウとして、本連載では機械学習の基本とライフサイクルを取り上げ、連載の後半では「7つの基本パターンの概要」を抜粋して解説する。今回のテーマは、7つの基本パターンのうち、「審査AI」「テキスト分類AI」「画像認識AI」である。(技術プロダクツユニットクロスメディア編集部)

 金融AI成功パターンには、以下の7つの基本パターンがあります。

  • ターゲティングAI
  • 価値算出AI
  • 需要予測AI
  • 不正検知AI
  • 審査AI
  • テキスト分類AI
  • 画像認識AI

 今回はこのうち、「審査AI」「テキスト分類AI」「画像認識AI」を紹介します。

審査AI

 金融業における審査業務はビジネスの根幹であり、そのロジックには古くから統計モデルが利用されてきました。統計モデルはその性質から、統計に精通したスペシャリストが多大な工数をかけて構築しています。どんなに精巧に作成した統計モデルであっても、時代の変化とともに傾向が変化し、過去の統計モデルでは実情に合わなくなります。さらに、最近では顧客データや企業のトランザクションデータが以前よりも広く使えるようになったことで、統計モデルの再構築が求められるものの、それに追いつかず、領域によっては審査業務を人が補助するケースも少なくありません。結果として、多大な人的リソースが使われ、審査にかかる時間が長くなるという課題があります。世の中の変化のスピードが加速度的に速くなっている現在、統計モデルよりも容易な手段が求められています。

 このような場面で有効なのが「審査AI」です。主な利用用途には、貸倒予測、延滞予測、死亡率予測、糖尿病予測などがあります。

 審査AIは、顧客や企業それぞれに対しての審査判断を行ううえでのキーとなるスコアを出力します。統計モデルの構築と比較すれば、審査AIは一定の数学的な過程をデータへの当てはまりなどから自動で構築されるため、大幅に構築時間を短縮することができます。統計モデルでは時間がかかり過ぎるような多様なデータを使うことができれば、これまで以上に精度の高い与信判断やリスク管理ができ、結果としてより多くの人を審査に通すことが可能となります。また人力で審査していた領域においては、審査時間の短縮に加えて、担当者ごとの技量の差を埋める役割を果たします。審査AIによって、各顧客や企業への審査判断を自動化し、より精度が高くスピードの速い審査業務が可能になります。

 審査AIでは、単純な審査結果だけではなく、複数の要素を組み合わせたうえで判断することがあります。要素ごとにキースコアを出すAIに分解することができ、それぞれのAIでどのようなターゲットが必要かを定義して構築する必要があります。複数のキースコアを出す場合には、ターゲットデータ準備をそれぞれに対して繰り返すことになります。