東京海上日動火災保険はデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるため、新たなデータ活用環境をAWS(Amazon Web Services)上に構築し、社内外のデータを集めて分析する体制を整えた。既に、営業指標を可視化したり、保険請求の不正検知アプリを生み出したりする成果を上げている。
「社内の業務システムがサイロ化していたため、利用部門のリクエストに応じてデータマートなどから必要なデータを集めるのに手間がかかっていた」。東京海上日動システムズの木村英智デジタルイノベーション本部部付部長/データサイエンス・スペシャリストは従来のデータ活用の課題をこう話す。
この課題を解決しようと、新たなデータ活用環境では「頻繁に分析対象となるデータを定期的に収集・更新する」仕組みにした。これにより、利用部門のリクエストに都度対応する作業を減らそうと考えた。社内からは顧客、契約、事故などの情報を収集し、1カ月単位で更新。社外からは自動車のドライブレコーダーのセンサー情報や衝撃検知時の動画ファイルなどを収集している。
各種データを集めるうえで重要な役割を担うのが、「データ中継サーバー」と「オペレーショナルデータストア」だ。データ中継サーバーは、基幹系を含む社内システムから集めたデータをデータレイクに同期する機能を持つ。データを蓄積するためのデータレイクは、AWSの仮想マシン「Amazon EC2」、オブジェクトストレージ「Amazon S3」などで構築した。
同社はプロジェクトごとにデータを定義しているので、データの項目名などが異なるケースが少なくない。オペレーショナルデータストアはETL(抽出、変換、書き出し)機能により、こうした不統一な状態にあるデータを分析用に加工する。
具体的には、データ辞書による項目名の変換や、名寄せなどを通じてデータを整備する。東京海上日動火災保険の村野剛太IT企画部長は「オペレーショナルデータストアを介することで、データの粒度や精度、コードなどが統一され、利用者のデータへの信頼感が高まる」と、その効果を説明する。
オペレーショナルデータストアによるデータ統一は現在進行形だ。今後、「データ中継サーバーはオペレーショナルデータストアへ移行していく方針」(木村氏)という。