住友生命保険は2つのクラウド上にそれぞれデータ分析基盤を構築し、データ活用を加速させている。従来のデータ分析基盤は1995年に稼働を開始した「情報分析システム」。オンプレミス環境のデータウエアハウス(DWH)で、簡易なビジネスインテリジェンス(BI)ツールを使ってデータを抽出し、データをExcelで加工していた。販売リポート作成、決算数値集計、各種分析業務などが主な用途だった。
情報分析システムの後継として、「新情報分析システム」と「スミセイデータプラットフォーム」の2つを2020年9月に稼働させた。
2つの使い分けについて住友生命保険の中川邦昭情報システム部上席部長代理データ分析プロジェクトチームリーダーはこう説明する。「情報分析システムは業務システムと位置付けている。全社員が使うので安定性が求められる。一方、スミセイデータプラットフォームはデータサイエンティストがビッグデータを分析するためのシステムであり、可用性より拡張性や柔軟性を重視している」(中川リーダー)。
データ分析基盤を刷新した背景には、データの「量」と「質」の変化に対応するために、分析基盤を高度化したいとのニーズがあった。量については今後2年以内に分析対象のデータは10テラバイト以上になる。これに対応するため、拡張性を確保する目的でクラウドへの移行を決断した。
質の面では、ExcelではなくPythonでデータを活用できるようにするため、そうした利用環境をクラウド上で整備した。
ダッシュボードに情報を統合
新情報分析システムはMicrosoft Azureに構築したDWHである。BIツールにTableau、CRMツールにはMicrosoft Dynamics 365を採用。これまでに20以上のダッシュボードを提供している。
新情報分析システムの稼働により、従来のリポートやデータ分析業務を改善した。住友生命保険の辻本憲一郎情報システム部長代理システム業務室(東京)兼データ分析プロジェクトチームは「毎月、販売リポートやランキング表を作成していたが、Tableauを使ったセルフサービスBIの提供により、そうした情報を本社ダッシュボードに統一すべくビジネス部門と共に取り組んでいる」と話す。
新情報分析システムのデータソースは保険契約、営業活動、企業情報など主にオンプレミス環境上の社内データである。オンプレミスとクラウド間のデータ連携は「Qlik Replicate」のレプリケーション機能で行う。DWHは「Azure Synapse Analytics」だ。このデータを、TableauやDynamics 365を介して全社の職員が利用する。