デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に伴い、IT基盤の要件が高度化してきた。素早くサービスを生み出し、改善を続けるには「DevOps基盤」が必要だ。データに裏打ちされた改善を行う上で「データ分析基盤」も不可欠である。これら2つの要素が「エンジン」となってDXの推進力を生み出す。
「新基盤の導入により、アプリの追加や変更にかかる時間が短くなった」。こう話すのは東京海上日動火災保険の村野剛太IT企画部長だ。2021年3月にリリースした「地震に備えるEQuick保険」は、地震の被災直後の生活費を保障する。地震発生時はAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)経由で震度情報を取得し、加入者の住所、契約条件に合致すればほぼ自動で保険金を支払う。
DXへの取り組みが日本でも本格化するのに伴い、その推進力を担うIT基盤を新設または刷新する企業が増えている。「サービス/プロダクトや業務の絶え間ない改善」を支えるには、変化に即応できる「DevOps基盤」が必要だ。また改善のポイントは、より多くのデータを集めて素早く分析する「データ分析基盤」がはじき出す。2つの基盤を築き、うまく連携させることがDXの成功に欠かせない。
DevOps基盤の中核はCI/CD
DevOps基盤の中核に位置するのは、アプリのビルドやテスト、デプロイといった一連の開発手順を管理する「CI(継続的インテグレーション)/CD(継続的デリバリー)パイプライン」だ。東京海上日動火災保険は、米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)のクラウド「Amazon Web Services(AWS)」上にCI/CDパイプラインを構築。DevOpsを通じて前述のような新商品を生み出している。
この新商品の開発では、AWSのマネージドサービスにより生産性を高めた。具体的にはイベント駆動型コード実行の「AWS Lambda」、NoSQLデータベースの「Amazon DynamoDB」、メール送信の「Amazon SES」、メッセージ送信の「Amazon SNS」などだ。
既存システムとはAPIを介して、保険の引き受けや支払いといった情報を連携している。
DevOps基盤のサーバー環境として日本でも普及しつつあるのが「コンテナ」だ。アプリの実行に必要なコード、ランタイム、設定情報などをイメージとしてまとめて管理できる。このイメージを開発環境からテスト環境、本番環境に素早く展開することで、アプリの改善スピードを上げられる。