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 前田建設工業は音声またはテキストによるチャットユーザーインターフェース(UI)をDX基盤の一つと位置付けている。同社のシステムは、分かりやすさや使いやすさが求められる。建設現場で業務を担当するのは、ITに詳しい人ばかりではないからだ。

 LINEのようなアプリが普及したことで、多くの社員はテキストチャットのUIに慣れている。そのため新システムのUIをテキストチャットにすれば学習コストを下げられる。将来的には音声チャットのUIを導入し、パソコンやタブレット、スマホでの文字入力が難しい建設現場でも、声で業務システムを操作できるようにすることを狙う。

 まずIT部門のエンジニア自身がチャットUIを試すため、2019年ごろから開発を始めた。テキストチャットのオープンソースソフト(OSS)である「Rocket.Chat(ロケットチャット)」を採用して、CI/CDの処理を行うチャットボットを開発した。例えばアプリケーションの開発・実行基盤の構築や、アプリケーションのデプロイ(配置)の作業などを、チャットボットとの会話形式で操作できる。CI/CDの処理はOSSのCI/CDツールである「Jenkins」を介して各種の自動化ツールが実行する。

 2021年4月には同じチャットUIの基盤を使い、人事や経理、総務などバックオフィスのFAQシステム「AIアシスタント」を開発した。AIアシスタントは社員からバックオフィス関連の質問をチャットで受け付け、米Google(グーグル)が提供するチャットボットのクラウドサービスである「Dialogflow(ダイヤログフロー)」に転送して回答を作成し、質問者に返す。回答はよくある質問を想定し、あらかじめ用意している。

前田建設工業が構築したバックオフィス部門のFAQシステム
前田建設工業が構築したバックオフィス部門のFAQシステム
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