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 D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)はデジタル技術を用いて、従来の企業と消費者の関係性や商品の売り方を大きく変えていくビジネスモデルである。その本質はデジタルの力を使って顧客の購買プロセス、購買経験を変革すること。D2Cにはテクノロジーも深く関わるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代のビジネストレンドとして、エンジニア視点からも理解しておこう。

 前回は企業がD2Cのサービスを立ち上げる際に有効な、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)などを活用したシステム構成の勘所を紹介した。

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 今回は、D2Cサービスを開始した後で企業がしばしばぶつかる課題4点を見ていきたい。

(1)市場規模が小さく、成長に上限がある
(2)顧客の価値観、ニーズをうまく捉えられない
(3)初期投資がかさみ、回収に時間がかかる
(4)組織・人材面で体制が整っていない

(1)市場規模が小さく、成長に上限がある

 D2Cでは商品そのものに加え、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)も含めた総合的な価値を提供するのが特徴だ。商品のコンセプトや世界観、こだわりを消費者に直接訴える。マーケティング観点でいうと、こうしたビジネスでは世の多数派である「マス」ではなく、「ニッチ」「セミマス」といったもっと小さいセグメントにアプローチする。市場規模は当然、後者のほうが小さい。いわゆるマス向けの商品が年商100億円以上だとすると、ニッチな商品は年商10億円を超えれば有望である。

 ニッチな市場に向けたビジネスをスモールスタートで立ち上げる場合、サービス開始当初は小規模ならではのスピード感を生かしてPDCAによる機能の検証・改善を高速化できる点がメリットだ。ところが市場規模の限界によって成長の壁にぶつかり、一定以上に売り上げを伸ばすのが難しいことが多い。成長を続けるには商品ラインアップや販路の拡大を検討する、サービス提供地域を広げる、マーケティングを強化して認知度・ブランド力を上げるなど、サービスの状況に応じて様々な手を打ち続ける必要がある。

 これに加えて大企業が手掛けるD2Cサービスの場合は、他の事業部に比べて売り上げ規模が小さいため社内で評価されにくいという課題がある。社内での存在感が十分ではないと、成長の壁にぶつかっても追加の投資が十分に得られず、事業として伸びきらないまま撤退の判断が下されるケースもある。