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 D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)はデジタル技術を用いて、従来の企業と消費者の関係性や商品の売り方を大きく変えていくビジネスモデルである。その本質はデジタルの力を使って顧客の購買プロセス、購買経験を変革すること。D2Cにはテクノロジーも深く関わるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代のビジネストレンドとして、エンジニア視点からもD2Cを理解しておこう。

 この特集ではこれまでD2Cのビジネスモデルの組み立て方や、システム構築時のポイントを紹介してきた。今回は数あるD2Cサービスの中でも先端技術の活用や、ビジネスモデルに特徴のある事例を見ていく。この連載の最初の回でも述べたようにD2Cは従来の単純なオンライン通販と比べ、以下のような特徴を備える。

〔A〕テクノロジーを駆使した購買プロセスや商品の最適化
〔B〕オンライン直販による中間コスト削減
〔C〕サービスコンセプトを顧客と共有し、共感を呼ぶ

 上記の特徴を生かしたり、欠点を補ったりするためにAI(人工知能)やAR(拡張現実)といった技術を活用する事例と、動画などの独自コンテンツを使ったマーケティング事例を順に見ていこう。

AIによってユーザーの好みに応じた菓子を定期配送

 「〔A〕テクノロジーを駆使した購買プロセスや商品の最適化」については、AI技術の発展に伴い、個々の顧客の志向、消費傾向に合わせたパーソナライゼーションやレコメンデーションを取り入れたサービスが増加している。D2Cも例外ではない。例えばスナックミーが2016年から提供している菓子のサブスクリプションサービス「snaq.me」では、独自開発のAIエンジンを活用して、顧客ごとに最適化した菓子を配送する。

 同社では顧客がサービスを利用し始めるタイミングで「おやつ診断」というアンケートを実施。好きな菓子の種類、食べる時間や場所、運動の回数など、食の好みから生活習慣までさまざまな情報を収集していく。

「snaq.me」の「おやつ診断」。アンケートを基に顧客の好みの菓子をAIが選ぶ
「snaq.me」の「おやつ診断」。アンケートを基に顧客の好みの菓子をAIが選ぶ
(図は「snaq.me」のWebサイトを基に日経クロステック作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 サービス開始後は、集めたデータを基にAIが選んだ8種類の菓子が入った「おやつ体験BOX」(1箱当たり税込み1980円)が定期的に顧客の自宅に配送される。配送頻度は2週間または4週間おきで、顧客が指定できる。

 サービスを利用し始めた後は、配送された菓子に対する満足度や、今後食べてみたい菓子に関して顧客がフィードバックを返す。このフィードバックをAIエンジンに反映することで、次回以降に配送する菓子のセレクトを顧客ごとにいっそう最適化していく。AIによる商品組み合わせは1000億通り以上になるという。

 収集した膨大な評価データは、商品開発の面でも重要な役割を果たす。例えば、類似する商品の中でどれを残すかをABテスト形式で決定したり、新商品のプロトタイプを作成し、評価データを見ながらブラッシュアップしたりできる。商品は全国170を超える菓子生産者・加工業者と提携し、共同で開発を進めている。商品を企画・開発する企業が顧客と直接的な接点を持ち、顧客の声を収集しやすいD2Cならではの開発手法といえる。

 D2Cでは顧客のこだわりに応えつつ、共感を呼ぶようなマーケティング戦略を取るのが特徴だ。その点、「snaq.me」ではヘルシーさや自然さを打ち出している。毎月100種類以上の菓子をラインアップしているが、全て「食品添加物、ショートニング、白砂糖など不使用」をうたい、これが主なユーザー層である25歳~34歳の女性に響いているようだ。