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「老衰」が死因トップに?

人間拡張では健康や長寿といった根源的な欲求をテクノロジーでどう実現するかが大きなテーマになりそうです。

 私は人間の死因にも興味があります。毎年、厚生労働省が6月にデータ(概数)を発表しています。2021年発表のデータは20年のものですが、それによると日本で死亡した人は137万人いて、一方で出生数は84万人にまで減っています。死因は1位ががんで、2位が心疾患、そして3位が老衰なんです。老衰は1位のがんの約1/3の13万人です。5年前は5位だったのに、脳血管疾患や肺炎を抜いています。

 がんは研究が進んで細胞のゲノム変異が原因で悪性化することが分かり、様々な薬や治療法が開発されているので、これからは死因としては減っていくでしょう。一方、老衰で死ぬ人は今後も増えていき、私の予想では、日本は世界で初めて老衰が死因の1位になる国になるでしょう。そうなると、病気はもちろんゼロにはならないにしても、いかに寿命を延ばせるかが次の大きな課題になると思います。

鎌田さんは先のブログの中で「人生120年時代」と書かれています。

 なんで120年にしたかというと、ギネス世界記録の長寿記録が122歳なんです。その122歳が、実はここ20年ほど破られていません。平均寿命は延びていますが、最高年齢は長くなっていないのです。その意味でも、人間が本来持っている寿命を延ばせるかはチャレンジなのです。

人間拡張技術が発達すれば、人間の多くの部分をテクノロジーで代替できます。そうなると、どこまでなら許されるかという倫理的な問題が大きな議論になりそうです。

 倫理的な観点や、どこまでテクノロジーで拡張していいかというような話は大きな議論になるでしょう。でも、長寿は中国・秦の始皇帝の時代から人間の大きな願望としてあります。人間って歴史的にも新しいことにチャレンジし続けていて、アフリカを起点に地球上にくまなく拡散した後は宇宙に飛び出したりしているわけです。なので、人間の一定数はチャレンジするDNAを持っていて、将来は地球外へ出ていく人や、生身の肉体を捨ててフルデジタルで生きていく人、生身の肉体でいかに長く生きるかを追求する人など、様々な選択肢が生まれるかもしれません。

鎌田富久(かまだ・とみひさ)氏
鎌田富久氏(TomyK 代表・東京大学大学院特任教授)
鎌田富久(かまだ・とみひさ)氏 東京大学で情報科学を専攻、理学博士。ACCESS共同創業者。世界初の携帯向けWebブラウザーを開発。TomyKを設立し、技術系スタートアップの支援、起業家を育成。東京大学大学院情報理工学系研究科特任教授を兼任。(写真:加藤 康)