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 鹿島とリコーが仮想現実(VR)を活用し、工事現場から離れた場所にいる受発注者の打ち合わせの効率化を進めている。国土交通省北陸地方整備局の河川工事の現場を再現したVR空間で、参加者の動きを模したコンピューターグラフィックス(CG)や現場のカメラ映像などを共有し、構造物の見たい部分や資料を見て話したい箇所の位置関係をつかみやすくした。

建設現場を再現したVR空間を体感できる。ディスプレーに映るのは施工現場の川底の3次元モデル(写真:日経クロステック)
建設現場を再現したVR空間を体感できる。ディスプレーに映るのは施工現場の川底の3次元モデル(写真:日経クロステック)
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 北陸地整が2015年度から進めている信濃川大河津分水路の改修事業。その1つ、19年2月に始まった新第二床固改築1期工事は鹿島・五洋建設・福田組特定建設工事共同企業体(JV)が施工する。川の中に9基の鋼殻ケーソンを設置する工事や、川底にコンクリートを打設する工事などを手掛けている。

 流れる川で施工する現場は直接見に行けない場所もある上、新型コロナウイルス感染症の拡大も考慮し、受発注者は互いに離れた場所で図面や3次元モデルを共有しながら打ち合わせを進めてきた。現場で立ち会う場合と比べると、構造物の位置関係や施工手順に関する意思疎通に手間や時間がかかっていた。

 そこで鹿島は21年5月、3次元モデルや現場の映像、資料データをVR空間で共有するリコーのサービス「RICOH Virtual Workplace(リコーバーチャルワークプレイス、VWP)」を導入。幅が約300m、奥行きが約250mに及ぶ施工現場周辺のBIM/CIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング/コンストラクション・インフォメーション・モデリング)のモデルを使って、周辺地形を含む1km四方のVR空間を再現した。

 受注者と発注者はそれぞれの事務所でVRヘッドセットを装着して、VR空間に接続する。首の動きに合わせて映像が滑らかに動くため、まるで現場にいるかのような視点で施工現場の3次元モデルを見ることができる。機器には市販のヘッドセットを使っているが、リコーは独自のソフトウエアを開発。VR映像を表示する遅延を減らしたり画質を高めたりしているほか、視点を移動させる際の画面の切り替え方などを工夫し、「VR酔い」を抑えた。

 VR空間では、参加者の頭部と両手の動きをCGで表現した「アバター」が表示される。参加者はヘッドセットを通じて会話ができ、発話時はアバターの口が動く。VR空間の参加者同士の位置関係や首の向きに対応して会話の音声が聞こえる上、アバターの手を動かしてジェスチャーができる。

 例えば「皆さん、こちらを見てください」と呼びかければ、参加者同士の意思疎通がスムーズになる。

会話時は発話者のアバターの口が動く(写真:日経クロステック)
会話時は発話者のアバターの口が動く(写真:日経クロステック)
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