全3620文字
PR

探索時間を4分の1以下に

 DSP-1181は脳内神経伝達物質であるセロトニンの受容体に作用する化合物で、強迫性障害を予定適応症としている。大日本住友製薬は同じ受容体をターゲットにした抗不安症薬「セディール(一般名クエン酸タンドスピロン)」をすでに販売しており、こうした中枢神経領域は同社が特に強みを持っている分野の1つでもある。

 AIが使われたのは新薬候補の化合物を設計したり絞り込んだりする化合物探索の過程だ。化合物探索は業界平均で4年半を要するという調査結果があるが、大日本住友製薬とExscientiaはDSP-1181の探索を12カ月未満で完了させた。

AIなどのデジタル技術を駆使する創薬のイメージ
AIなどのデジタル技術を駆使する創薬のイメージ
(出所:大日本住友製薬)
[画像のクリックで拡大表示]

 大日本住友製薬によると、今回のターゲットであるセロトニン受容体が含まれるGPCRと呼ばれる受容体はもともとよく知られたターゲットのため、活性や毒性に関するデータの蓄積が豊富だったという。こうしたデータを学習したAIが、ターゲットに対する活性が高くかつ毒性が低いような化合物を効率的に導き出し、平均の4分の1以下というスピードでの探索を可能にした。

 現在はDSP-1181の安全性を確かめる第1相治験が日本で進行中だ。2021年5月には両社の協業で生まれたDSP-0038という別の化合物について、アルツハイマー病の精神病症状の治療薬候補として米国で第1相治験を始めることも発表した。AI由来の化合物が人間に投与されているというこれらの事実が示すのは、AI創薬とはもはや夢の技術ではなく、今まさに活用されている創薬手法の1つになったということだ。