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低くなる業界の垣根

 製薬業界へのAIの浸透は、ビジネスモデルを垂直統合型から水平分業型へ変化させるだけではなく、業界の垣根を低くするという側面もある。大日本住友製薬のように自社でAIを開発する製薬企業も珍しくなくなりつつある一方、AI開発企業が製薬側に参入する機運も見られる。

 自然言語処理技術を武器にターゲット探索などを支援するAIを開発しているFRONTEOは、2021年1月に東京都から第一種医療機器製造販売業許可を取得した。これによって同社はAIを提供するだけでなく自らが医療機器の開発も行えるようになった。2021年4月には「会話型 認知症診断支援AIシステム」の臨床試験を開始し、2021年5月には「骨折スクリーニングAIプログラム」の開発も始めた。

 上記は医療機器の例だが、もし同様に医薬品の製造販売業許可を取得することになれば、AI開発企業でありながら製薬企業と同じ土俵に立つことになる。FRONTEOのライフサイエンスAI CTO(最高技術責任者)の豊柴博義氏は「将来的には我々のプラットフォームで見つけたターゲットについて、自ら研究開発を進めるという可能性もある。製薬企業から恐れられる存在になりたい」とビジョンを語る。

 AIをはじめとするデジタル技術が及ぼす影響は、創薬の在り方だけでなく製薬業界の在り方にまで波及しつつある。AI創薬も遠くない将来、「当たり前」になるだろう。急速に変化する市場環境の中で、AI開発企業、そして製薬企業が生き残るには何が求められているのか。少なくとも、それを考えるために立ち止まっている時間はないということは自明である。