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 5G(第5世代移動通信)時代のネットワークは、ユーザー体感の向上に加えて、他の産業との連携による新たな産業の創出や地方創生、人手不足など社会的課題の解決への期待も高まっています。そのためには、新たなユースケースに対してさまざまなパートナーが開発したソリューションを柔軟に取り込むことが期待されます。

 これらの期待に応える手法としてネットワークのオープン化があります。オープン化を活用することで、さまざまな技術を結合、あるいは融合させることで新たな価値を生み出すことが可能です。世界の通信事業者を中心にネットワークのオープン化を進める業界団体「O-RAN ALLIANCE」は、下記の3つのオープン化について標準仕様の作成やオープンソースコードの作成を進めています。

(1) 装置間のインターフェースのオープン化
(2) 装置内のハードウエアとソフトウエアの分離(vRAN化)
(3) ネットワークのインテリジェント化(RANオペレーションの自動化、最適化)

O-RAN ALLIANCEが狙う3つのオープン化
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O-RAN ALLIANCEが狙う3つのオープン化
(出所:NTTドコモ)

 世界各国の主要な通信事業者が、続々とネットワークのオープン化に取り組みつつあります。連載第2回では、O-RAN ALLIANCEが目指す無線アクセスネットワーク(Radio Access Network、RAN)オープン化の詳細と、なぜ世界の通信事業者が続々とオープン化を目指しているのか、その導入メリットについて解説します。

インターフェースのオープン化は、最適な装置を選択できるメリット

 まずは(1)のO-RAN ALLIANCEで進めている装置間のインターフェースのオープン化について解説します。RAN内の主な装置間のオープン化は、CU(Central Unit)/DU(Distributed Unit)とRU(Radio Unit)を接続する「フロントホールインターフェース」、 および4G基地局であるeNBとCUを接続する「X2インターフェース」があります。オープン化によって、通信事業者は「展開シナリオに応じた最適な装置を選択できる」というメリットが得られます。

 例えば周波数帯に応じて、最適な無線ユニットを選べるようになります。日本では5G用に新たに割り当てられた周波数として、3.7GHz帯と4.5GHz帯、および28GHz帯があります。無線ユニットであるRUは、それぞれの周波数に対応した装置が必要になります。

 RUは展開シナリオに応じた最適な装置が異なります。例えば、都市部では出力を抑えた小さめのRUが必要です。その他、他の周波数帯とアンテナを共有することでスペース削減したい分離型のRUや、ビームフォーミングを行うことで干渉を低減しスループットの向上を期待したい一体型RU、屋外のエリアを確保するために出力を大きくしたいRUなど、オープン化されたネットワークでは、消費電力やサイズ、重量、コストを考慮してベストな装置を選択することが可能になります。

 さらに、複数ベンダーの装置を選択することでサプライヤーチェーンリスクを軽減できます。半導体の不足や自然災害、さらには政治的リスクにより調達困難な事態が発生したり、何らかの要因で開発が遅れたりした場合にも、通信事業者の計画に対する影響を最小限に抑えることが可能です。

物理レイヤー内に機能分担点、マルチベンダー実現のため詳細な規定

 O-RAN ALLIANCEで最も成熟度が高く、商用化の取り組みが先行しているのが、異なるベンダーのRUとDUの相互接続を可能とするO-RANオープンフロントホール仕様です。

 携帯電話の標準仕様を策定する「3GPP」でも、5G標準化においてフロントホールの検討がなされましたが、この時点では仕様化には至りませんでした。無線プロトコルの低レイヤーにCU/DUとRUの機能分担点を置く「LLS(Lower Layer Split)」と呼ぶオプションの絞り込みが困難などの理由で、3GPPではベンダーから懸念が示されたからです。

 その後NTTドコモは、オープンフロントホールに賛同する通信事業者やベンダーと共に、O-RAN ALLIANCEの前身の1つである業界団体「xRAN Forum」に、フロントホールのオープン化の議論を持ち込みました。O-RAN ALLIANCE発足後、同団体にて19年3月にO-RANフロントホール仕様がリリースされ、オープンフロントホールを実現したという経緯になっています。O-RANフロントホールは、世界の多くの通信事業者やベンダーが採用意向を示しています。

 O-RANフロントホール仕様は、具体的には「Split Option 7-2x」と呼ばれる機能分担の規定に基づいています。Split Option 7-2xでは、無線プロトコルの物理レイヤー(PHY)内に機能分担点を置き、フロントホールで周波数領域のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号のIQサンプル列を送受信します。

IQサンプル列=複素デジタル信号の同相(In-phase)および、直交(Quadrature)成分のサンプリング系列のこと
「Split Option 7-2x」による機能分担の詳細
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「Split Option 7-2x」による機能分担の詳細
(出所:NTTドコモ)

 そしてRU-DU間でビームフォーミング情報やIQサンプル列、時刻周波数同期信号などを送受信するための信号や動作、およびRUの保守に必要なメッセージや動作を、それぞれCUS(Control, User and Synchronization)-plane仕様とM(Management)-plane仕様において詳細に規定しています。これによって、異なるベンダーのRUとDUの相互接続を可能とするオープンなインターフェース仕様を実現しています。さらに、製品実装や相互接続を促進するためのコンフォーマンステスト仕様とIOT (Inter Operability Testing)仕様もリリースしています。