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 連載の第1回で説明した通り、世界の通信事業者を中心にネットワークのオープン化を進める業界団体「O-RAN ALLIANCE」が描くビジョンの一つとして、インテリジェントな無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)の実現があります。5G(第5世代移動通信システム)時代のネットワークは多種多様なアプリケーションへの対応が求められ、複雑化が進みます。その際、オペレーションやネットワークの最適化は、従来のように人手で対応することが困難になる可能性があります。人工知能(AI:Artificial Intelligence)や機械学習(ML:Machine Learning)を活用した、より自律的かつ自動化されたオペレーションの実現が必要不可欠になります。

 O-RAN ALLIANCEでは、このようなビジョンの実現に向けて、異なるベンダーが提供する基地局装置を自由に組み合わせられる「Open RAN」を前提としつつ、AI/MLを活用しながら、ネットワーク設計や運用の最適化ができるRANの構成(アーキテクチャー)や、オープンインターフェースの検討を進めています。このインテリジェントなRANの実現の中心に位置付けられているのが、O-RAN ALLIANCEが規定する「RIC(RAN Intelligent Controller)」と呼ばれる機能です。

RAN制御のためのポリシーを生成する「Non-RT RIC」

 O-RAN ALLIANCEのRANアーキテクチャーでは図1に示す通り、AI/MLを活用したネットワークのインテリジェント運用を実現するための論理ノードとして、RICという機能を定義しています。RICはパラメーター設計や運用を自動最適化する役割を担い、制御周期が違う「Non-RT(Real Time)RIC」と「Near-RT RIC」という2種類で構成します。

図1 AI/MLを活用したネットワークのインテリジェント運用を実現するための論理ノードである「Non-RT RIC」と「Near-RT RIC」
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図1 AI/MLを活用したネットワークのインテリジェント運用を実現するための論理ノードである「Non-RT RIC」と「Near-RT RIC」
(出所:NTTドコモ)

 Non-RT RICは、制御周期が1秒以上と比較的長期で、RANの制御に関わるポリシー生成や通知、Near-RT RICへの情報転送などを担います。RANの保守やオーケストレーションを行う「SMO(Service Management and Orchestration)」の内部に配置します。

 Non-RT RICで生成するポリシーは、RANで提供されるサービスの品質(QoS:Quality of Service)や、ユーザーの体感品質(QoE:Quality of Experience)などの形で表現します。ポリシー自体は、サービスに求められる要求条件や、基地局装置や端末から収集される各種情報(測定データや制御ログ)の分析によって生成します。

 生成した制御ポリシーは、O-RAN ALLIANCEが仕様化するA1インターフェースを通じて、Near-RT RICに通知します。基地局装置や端末からの各種情報は、同じくO-RAN ALLIANCEが仕様化するO1インターフェースを通じて基地局装置からSMOに収集し、ここでAI/MLを活用して分析します。O1インターフェースから収集した情報は、外部システムなどから取得する情報とともに、Non-RT RIC内で処理して、A1インターフェースを介してNear-RT RICに転送することも可能です。さらにO1インターフェースを通じて、SMOが基地局装置の各種設定を行ったり、Non-RT RICがSMOを通じて制御したりすることもできます。

 Non-RT RICでは、各種情報の分析やポリシーを生成するために「rApp(Non-RT RIC Application)」と呼ばれるアプリケーションを用います。rAppとNon-RT RICの基盤(プラットフォーム)間は、O-RAN ALLIANCEが仕様化するR1インターフェースによって接続します。rAppは、Non-RT RICのプラットフォームを提供するベンダーだけではなく、第三者からの提供も可能です。アプリケーションとプラットフォーム部分がオープンインターフェースで接続されているためです。したがって、携帯電話事業者が、RANの運用経験やノウハウに基づいて制御ポリシーをrAppのアルゴリズムに反映し、さまざまな要求条件を持つサービスを提供していくことも可能になります。