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 クラウドゲームなどで着々と展開が始まっているエッジコンピューティング。5G(第5世代移動通信システム) SA(Stand Alone)時代には、より柔軟にエッジコンピューティングを実現できるようになる。これらの動向についてエリクソン・ジャパンが説明する。

 エッジコンピューティングとは、通信ネットワークのユーザー端末から近い場所、ネットワークの端(エッジ)で、アプリケーションを分散処理することを指します。端末とサーバー間のデータ送受信の遅延時間を小さく抑えることができ、特に高いリアルタイム性が求められるアプリで有効な仕組みです。本連載1回目の記事では、5Gの無線アクセス部分において遅延時間を抑える仕組みについて述べました。その無線部分とエッジコンピューティングで、遅延を抑える仕組みを組み合わせることで、エンド・ツー・エンドの低遅延を実現できます。

 エッジコンピューティングの中でもモバイルネットワークを中心としたタイプをMEC(Mobile Edge Computing)と呼びます。一方で、モバイルに限定せず、端末の近くのネットワーク内にサーバーを配備し、アプリを処理することを、広義にマルチアクセスエッジコンピューティング(Multi-access Edge Computing、これもMEC)と呼びます。ここでは5GネットワークにおけるMECを軸に説明します。

MECが増えれば、遅延時間も抑制

 MECは数が多くなるほど、設置したMECとユーザー端末との距離が平均的に短くなります。この距離の短さによってデータの送受信が効率的になり、遅延時間をより小さくできます。ただ現実には、遅延に対するアプリの要求条件を中心に、コスト面を含めたビジネスモデルや設備的な制約なども含めてエッジサーバ―の数や配備場所が決まります。

 具体的なエッジサーバ―の設置場所は、移動通信事業者がネットワーク設備を置き、ネットワーク運用の拠点となっている各地域のネットワークセンターや、通信設備が置いてあるその他のサイトが有力になります。既にNTTドコモやKDDIはそれぞれ、自社設備である「ドコモオープンイノベーションクラウド」や米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)のサービス「AWS Wavelength」としてMECを提供しています。

 NTT東西の固定電話の通信局(旧電話局)を一部借用してエッジサーバ―を設置する形態もあります。通信局は全国に数千カ所あるので、必要に応じて利用できる局を選定します。さらに、移動通信事業者の無線基地局サイトである鉄塔やビルに、必要に応じてエッジサーバ―を設置することも考えられます。このような基地局サイトは全国に数万あり国内のコンビニエンスストアの店舗数に匹敵します。工場で5Gを利用する場合などは、工場内に設置したエッジサーバ―から製造ロボットを制御する形態もあります。

 表1に代表的なMECアプリについて、エッジサーバ―上のアプリと端末間の往復遅延時間の期待値例を示してみます。対戦型クラウドゲームや建設機械の遠隔制御などではその値は40~100ミリ(1/1000)秒ですが、ドローン制御やクラウド型VR(Virtual Reality)では20~40ミリ秒、遠隔手術やクラウド型AR(Augmented Reality)では10~20ミリ秒、産業用ロボット制御では10ミリ秒以下などです。

表1 MECアプリと往復遅延時間の期待値例
表1 MECアプリと往復遅延時間の期待値例
(エリクソン・ジャパンの表を基に日経クロステックが作製)
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 これからの5G SA構成におけるMECの実現形態について図1に示します。5G Core(5GC)におけるユーザーデータのルーティングを行う「UPF(User Plane Function)」の外部に、エッジサーバ―を接続する形になります。ユーザー端末からは、UPFを経由してエッジサーバ―上のアプリとデータをやりとりします。

図1 5G SAにおけるMECの実現形態例
図1 5G SAにおけるMECの実現形態例
(エリクソン・ジャパンの図を基に日経クロステックが作製)
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