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 豊田自動織機の「ジャスト イン オイル」は、乾燥炉の中で車体を運ぶコンベヤチェーンに、自動で給油するからくりである(図1)。製作したのは同社の長草工場(愛知県大府市)。かつては保全担当者が手差しで給油していた作業を自動化した。「第25回からくり改善くふう展2020」で、「アイデア賞」を受賞した作品である。

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図1 ジャスト イン オイル
図1 ジャスト イン オイル
からくりの外観(上)、乾燥炉との位置関係(下)。乾燥炉で車体を運ぶコンベヤチェーンに自動で給油する。独自の動力は要らない。(出所:日経ものづくり)
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* からくり改善くふう展
工場の改善活動で生まれた「からくり」の展示会。日本プラントメンテナンス協会が主催する。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年度の同展は2021年3月23~26日のオンライン開催となった。50社が162作品を出品。

 同工場では、トヨタ自動車のクロスオーバーSUV「RAV4」を製造している(図2)。ジャスト イン オイルが活躍するのは、中塗り工程を終えたRAV4の車体を乾かす、乾燥炉である。この乾燥炉にはコンベヤチェーンが環状に設置してあり、その1周の長さはおよそ245m。塗装された車体は台車に載せられ、その台車をチェーンが引っ張って動かし、乾燥炉の中を通過させる仕組みである(図3)。

 同社によると、乾燥炉は数十年前から稼働しているもので、1度におよそ20台の車体が入る大きな設備だ。台車を引っ張るチェーンは電動モーターで駆動していて、そのスピードは秒速12cmほど。乾燥炉の中でゆっくりと車体を移動させながら乾燥させる。「およそ70秒に1台のスピードで乾燥が終わる」(豊田自動織機)

図2 クロスオーバーSUV「RAV4」
図2 クロスオーバーSUV「RAV4」
豊田自動織機長草工場の展示車両。(出所:日経ものづくり)
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図3 乾燥炉の動作模型
図3 乾燥炉の動作模型
動作模型の外観(上)、給油の瞬間(下)。チェーンのリンク同士を接続するピンにオイルを給油する。この模型は机に載せられる大きさだが、実物と同じ長さ約10cmのリンクを使って製作したという。(出所:日経ものづくり)
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 実は、チェーンへの自動給油の仕組みは以前から導入していて、これまでは既製の給油装置を使っていた。しかし、この従来装置はチェーンのしゅう動部であるピンへの給油が不足しているという問題があったという。そのため、以前は月に1度ほど、清掃のためにラインを休止するタイミングを見計らって、保全担当者が手差しで追加の給油をしていた。

 手差し給油の作業工数は2.7時間ほどだったが、手間のかかる作業だったという。給油しなければならないピンの数は全部で2450個あり、1回あたりの給油量はおよそ0.1cc。「余計なオイルは塗装品質に影響を与える」(同社担当者)ため、慎重な作業が要求されていた。また、乾燥炉の内部は暗所であるため、危険を伴う作業でもあった。

 同工場がジャスト イン オイルを製作したのは、そんな給油作業を安全かつ高品質にこなすためである。同からくりが搭載する機能は盛りだくさんで、「給油装置本体」の他、給油を開始する「起動レバー」、給油を停止する「給油自動解除装置」、「オイルタンク」といった複数の要素から成る。

 ここでは動作模型を参照しながら、給油の中心的な機能を果たす「給油装置本体」に絞って、詳しく見ていこう。