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 マツダの「姿勢堂々 ~100年先も良い姿勢~」は、クランクシャフトの生産工程においてワークの姿勢を自重だけで変化させるからくりである(図1)。モーターやエアシリンダーといった動力源なしにワークを90度倒し、パレットに積みやすくする(図2)。「第25回からくり改善くふう展2020」の出展作品である。

図1 姿勢堂々 ~100年先も良い姿勢~
図1 姿勢堂々 ~100年先も良い姿勢~
縦向きのクランクシャフトを、自重の利用でやわらかく倒して横向きにする。高さはおよそ60cm、ボルト穴4カ所で床に固定して使う。(出所:マツダ)
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図2 クランクシャフトをパレットに積む様子
図2 クランクシャフトをパレットに積む様子
クランクシャフトを姿勢堂々で横向きにしてからパレットに置く。(出所:マツダ)
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* 第25回からくり改善くふう展2020
工場の改善活動で生まれた「からくり」の展示会。日本プラントメンテナンス協会が主催する。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年度の同展は2021年3月23~26日のオンライン開催となった。50社が162作品を出展。

 同社本社工場(広島市)の第3パワートレイン製造部は、鍛造によるクランクシャフトの成形を担当している。プレス機から出てきたクランクシャフトは、多関節ロボットがパレットに積む。50本ほど積んだら、そのパレットごとフォークリフトが次の切削工程へ運ぶ。

 クランクシャフトは、プレス機の出口からロボットの近くまでコンベヤーによって運ばれてくる。そのときの姿勢は、互い違いのクランクピンが上下に位置する縦向きだ。そのままロボットのハンド機構でつかんで移動させると縦向きのままなので、平らなパレットの上でごろんと横転してしまう。クランクシャフトを丁寧に扱えない。

 そこで、同工場はこれまで「姿勢制御装置」を使っていた。姿勢制御装置によってクランクシャフトを横向きの姿勢に変え、ロボットがつかみ直してからパレットに積んでいた(図3)。

図3 以前の姿勢制御装置
図3 以前の姿勢制御装置
エアシリンダーを動力として用い、クランクシャフトを縦向きから横向きに変えていた。(出所:マツダ)
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 姿勢制御装置は、エアシリンダーの動力によってクランクシャフトを90度回転させる。ロボットはコンベヤーから縦向きのクランクシャフトをつかみ上げ、姿勢制御装置に置いて、横向きの姿勢になったクランクシャフトをつかみ直し、パレットに積む動作を繰り返す。

 この姿勢制御装置には、クランクシャフトの移動経路が遠回りになり、動線に無駄が生じるという課題があった。「姿勢制御装置を設置できる場所には限りがあり、しかもロボットやパレットから少し離れた場所に置く必要があった」(同社)ためだ。姿勢堂々は姿勢制御装置よりも小型でパレットのより近くに配置できるため、ロボットの動線を短くできる。