「これまでの勤務の中で利用者のニーズや意向を丁寧に確認せず、上位の料金プランを勧誘したことがある」との回答が全体の4割強――。
総務省が2021年3月に携帯ショップのスタッフへ実施したアンケートから驚くべき実態が判明した。総務省の「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」では、携帯ショップのスタッフが利用者のニーズを踏まえずに特定の料金プランを推奨することは不適切としている。上記アンケートはあくまで経験の有無を聞いたものだが、ガイドラインに反する不適切な販売が少なからず横行していたことが改めて浮き彫りになった。
成績が悪い場合は強制閉店も
「目も当てられない状況だ」。アンケートを見た総務省有識者会議の構成員はこのようにあきれる。アンケート全体は構成員のみの公開にとどめており、非公開となった部分のアンケート結果は「あまりにひどい実態」(同)だったという。
総務省の有識者会議は、携帯大手が定めるショップの評価指標や手数料体系がこうした不適切な販売を引き起こす要因になっていると見る。
携帯ショップはNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社だけで全国に約8000店あり、この約99%は携帯大手と別の販売代理店が運営を担っている。販売代理店の手数料は携帯各社が設定した評価指標に基づいて決まり、営業目標の達成率で支給額が大きく変動する。成績が悪い場合は手数料を停止され、強制閉店に至るケースもある。営業目標の達成に向け、携帯ショップのスタッフには必然とプレッシャーがかかることになる。
冒頭のアンケートで不適切な販売の理由を聞くと、販売代理店における上司の指示や目標の存在に加え、携帯大手の営業目標とする回答が4割強に達した。ある販売代理店の幹部は「営業目標は厳しいものがあり、ショップの負担になっているので緩和してほしい」と訴える。
問題はこれだけではない。総務省が同じく2021年3月に販売代理店へヒアリングを実施したところ、悩ましい実態が次々と明らかになった。例えば端末の販売価格。携帯大手の直販価格と販売代理店への卸価格が同じになっており、利益(頭金)を上乗せしないことが勧奨されているという。クレジットカード決済の場合はカード会社に手数料を払う分、赤字になる。これでは携帯ショップが、回線とひもづかない端末を積極的に売ろうとは思わないだろう。