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 「まるで死刑宣告」――。

 ある携帯ショップオーナーは戸惑いを隠さない。NTTドコモは2021年2月下旬、全国のドコモショップを経営する販売代理店向けに説明会を開催した。ここで販売代理店に対し、ショップ独自の商材を扱えるようにする「業容拡大」を全面的に認める方針を明らかにしたのだ。

NTTドコモが打ち出した「独自商材の全面解禁」が大きな波紋を呼んでいる
NTTドコモが打ち出した「独自商材の全面解禁」が大きな波紋を呼んでいる
(撮影:日経クロステック)
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 携帯ショップにとって独自商材の解禁は、ビジネスを広げるチャンスであり、喜ばしいはず。だが「ドコモから突き放された。手数料を減らす代わりに、ショップの独自ビジネスを解禁し、自ら食いぶちを探せということか」と、戸惑うショップオーナーが少なくないのだ。

 携帯ショップは、携帯電話事業者からの手数料収入を収益の大部分とする一本足のビジネス構造である。そのはしごを外すかのようなNTTドコモの方針転換は、評価指標や手数料問題で揺れる携帯ショップに、功罪相半ばする波紋を広げている。

独自商材の解禁に、なぜショップが戸惑い?

 「携帯ショップのビジネスの自由度を上げることが、顧客へのサービス向上につながると考え、ショップの独自商材解禁に踏み切った。丁寧に説明したつもりだが、一部ショップからは『突き放された』と言う感想をもらったことも事実。その点については素直に反省している」ーー。NTTドコモ営業本部販売部チャネルデザイン担当の蓑手康史担当部長はこう弁明する。

 「ドコモショップ」や「auショップ」など、全国に約8000店舗ある携帯ショップは、その99%を販売代理店が経営している。これらショップでは従来、携帯大手が許可する商材以外の販売が基本的に認められていなかった。携帯大手のブランドを冠したショップである以上、品質面などで責任を持てない独自商材を扱うことは、ブランド毀損につながりかねないという判断からだ。

 NTTドコモはこれまで、ショップの独自商材を一部容認していたものの、同社自らが提供するサービスと類似した場合などで制限するケースも多かった。その制限を今回、大きく取り払った。

 「ショップが独自商材を扱いたい場合、ドコモに申請してもらう。既に21年5月から申請の受け付けを始めた。現時点ではショップで独自の物販をしたいといったニーズが多い。スマホ教室で培ったノウハウを生かし、ドコモショップで地域のカルチャースクールのようなビジネスをやりたいといった申請もある」と、蓑手担当部長は打ち明ける。

 総務省や公正取引委員会は、携帯大手によるショップの独自商材取り扱いの制限を問題視していた。独自商材を制限することで、ショップによる評価指標や手数料への依存度が高まり、利用者のニーズとかけ離れた無理な販売を助長するとの分析からだ。

 NTTドコモがいち早く決断した独自商材の全面解禁は、ショップにとっても、業界全体にとっても喜ばしいはず。にもかかわらず「まるで死刑宣告」「突き放された」という声が少なからずショップオーナーから聞こえてくるのはなぜか。

「販売手続きの50%をデジタル移行」の衝撃

 実はNTTドコモは21年2月下旬の販売代理店向け説明会で、もう1つ重要な方針を明らかにした。「2023年度までに販売手続きの50%をデジタルチャネルに移行する」という目標である。

 現時点で、大半を占めるドコモショップなど店頭の手続きを、オンラインショップをはじめとしたデジタルチャネルに移行する。店頭の手続きを減らすことは、すなわちショップの手数料が減ることに等しい。NTTドコモがこの方針を独自商材の全面解禁と一緒に公表したことで、ショップオーナーは「ドコモが手数料を減らす代わりに独自商材を解禁した」と受け止めたのだ。

NTTドコモは21年5月の決算会見でも販売チャネルのデジタル化の方針を明らかにした
NTTドコモは21年5月の決算会見でも販売チャネルのデジタル化の方針を明らかにした
(出所:NTTドコモ)
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 NTTドコモの蓑手担当部長はこの点についても「ドコモショップの手続きが減っていくような誤解を招いてしまった」と弁明する。「デジタルチャネルへの移行は、ドコモショップの店頭でショップスタッフが利用者を誘導するように進めていきたい。結果として店頭での利用者の待ち時間短縮などにもつながる」(同)と続ける。