携帯ショップなのに店内にはアウトドア用品が並び、店外にあるカフェでは軽食も楽しめる。こんな店舗が熊本市にある。同市に本社を置く販売代理店、DNS(ディエヌエス)が運営する「d garden 東バイパス店」だ。
携帯ショップは今、大きな節目を迎えている。フィーチャーフォンからスマホへの乗り換えはほぼ一巡。端末の高機能化や高価格化などにより、ユーザーは以前ほど頻繁に買い替えなくなった。今後はオンライン手続きの利用も増えていくと想定され、携帯ショップの存在意義が問われている。DNSの取り組みは、携帯ショップの今後のあるべき姿を模索していくうえでヒントとなる。
品薄状態が続く人気ぶり
NTTドコモは新たな体験価値を提供する店舗として「d garden」の展開を2019年4月から進めてきた。「コンセプトはトータルライフサポート拠点。対面だからこそ出せる価値があり、地域の役に立っていきたい」(営業本部販売部チャネルデザイン担当の池田圭一郎担当部長)と意気込む。回線契約の有無に関係なく、KDDI(au)やソフトバンクの顧客でも気軽に立ち寄れるような店舗を目指している。
その中で異色と言えるのが、2021年4月にオープンした東バイパス店である。現状ではカフェを併設したりスマホ教室を開いたりしているd gardenが多い中、同店舗を運営するDNSは昨今のアウトドア人気に着目した。熊本県は自然が豊かでキャンプ場が多く、ソロキャンパーとして知られる芸人のヒロシさんも熊本県出身。愛好家だけでなく、ファミリー層にもキャンプの人気は高い。ツーリングやフィッシングも盛んだという。
一方、同県は2016年の熊本地震や2020年の熊本豪雨(令和2年7月豪雨)で甚大な被害に見舞われた。「携帯ショップは災害時に端末の故障対応などで頼りにされる存在であり、地域のインフラを支える役割を担っている。災害時にも利用できるアウトドア用品の需要は高く、顧客の評価も高い」(DNSの米澤誠社長)。120坪ある東バイパス店では3分の1ほどのスペースをアウトドア用品の売り場に割いた。
こだわったのは取扱商品。例えばキャンプ用品は大型商業施設やスポーツ用品店でも扱うが、初心者向けが多いという。これに対してDNSは「キャンプ経験者でもあまり目にしないようなグッズをはじめ、厳選した商品にこだわって取り扱っている。どちらかと言えば中級者向けが多い」(米澤社長)。開店以来、品薄状態が続いており、「この1~2カ月間でかなりの売り上げを記録した」(同)という。
このほか、アウトドアブランドのスノーピークが建築家の隈研吾氏と共同開発したトレーラーハウス「住箱(じゅうばこ)」を採用。住箱を店舗の外に置き、カフェとして運営している。コーヒーは200円(税込み、以下同じ)、カレーやパスタは500円と気軽に立ち寄れる価格設定とした。