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記事中の各コメント(VOICE)は、今回実施したアンケート調査の回答者への追加取材で得られた情報を掲載している。

 市場ニーズも現場の状況も知らない発注元の顧客が、必要以上の品質を求める。こうした過剰品質を、製造業界では多くの人が当たり前のように認識している。しかも激しい価格競争の中で低コスト化が進み、品質への十分な対価も支払われず、悪条件下で手間ばかり増える。このような状況に追い込まれた現場が、品質問題発生の温床になる。

 品質不正の背景として、過剰品質の「のりしろ」を逃げ場所に「安全性や性能に問題がなければ、顧客仕様や基準を満たしていなくても問題ない」と考えるようになる、という構図が透けて見える(図1、2)。

図1 顧客仕様を満たしていなくても問題ないか
図1 顧客仕様を満たしていなくても問題ないか
日経ものづくりが2021年4~5月に実施したアンケート「日本製造業の『品質』に関する調査」の結果。「安全性や性能に影響がなければ、顧客仕様や基準などを満たしていなくても問題ないとする雰囲気はあるか」との設問に、「問題ないとする雰囲気はある」との回答が3割を超えた。(出所:日経ものづくり)
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図2 過剰品質が不正の温床
図2 過剰品質が不正の温床
人材不足や作業の複雑化など過酷な環境に追い込まれた現場は、「安全性や性能に問題がなければ、顧客仕様や基準を満たしていなくても問題ない」と判断するケースがある。(出所:日経ものづくり)
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VOICE

最初に過剰品質を約束し、実際にはその品質を確保できなくても「実際の使用には問題ない、だから約束を守らなくても大丈夫」と思ってしまっている。(その他の製造業、品質保証・品質管理)

VOICE

発端は「過度な品質要求」に尽きると思う。 「できる」と言ってしまった後は、一層の過度な品質要求に応じざるを得ない体質を生じさせる。最終的にデータ改ざんなどが常態化する原因となる。トラブル発生後は、より厳しい品質管理を要求する悪循環だ。(その他、研究・開発)

 長年生産している製品ほど、品質とコストのバランスが崩れる傾向があるとの指摘もある。1度決められた品質の設定を維持したまま、コスト削減が進められる状況があるようだ。

VOICE

顧客が従来製品の品質を「既得権益」として考え、品質を「下げる」ことは許さないので、機能に全く関係ない無意味な品質までを維持する必要が出てくる。にもかかわらず顧客は品質の設定を変更せずに、コスト削減を要求する。サプライヤーは前例踏襲の品質を維持できなくなると分かっているが、利益を出すためにはやむを得ず「無意味」と考えている品質を下げざるを得ない。この状況が品質不正の温床になる。(その他の製造業、品質保証・品質管理)

 もともと、「図面の公差を確保しなくても、相手部品とうまくすり合わせができればよい、機能上の問題がなければ構わないという風土がある」(自動車等輸送用機器メーカー、監査役)との指摘もある。過剰品質が、こうした「風土」を正当化している側面がありそうだ。