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新型コロナウイルス対策として在宅勤務を中心としたテレワークが普及する一方、テレワークに取り組むビジネスパーソンにとってコミュニケーションは依然、大きな課題になっている。解決しないと業務の停滞などを招きかねない。そこでテレワーク先進企業の取り組みを中心に、課題の解決策を紹介する。今回は前回に続き、「日々の業務における対話」の活性化策として、テレワーカーに必須のスタンスやスキルを取り上げる。加えて、テレワーク環境下で部下と適切にコミュニケーションを取るための管理職向けの施策も取り上げる。

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あうんの呼吸は通じない、可視化や文字化のスキルが重要

 テレワーク環境下でコミュニケーションを活性化するのに必要な取り組みは他にもある。テレワーカーのコミュニケーションスキルを高めることだ。いくらツールを前のめりに活用しようとしても、テレワーク環境下でうまくコミュニケーションを取るスキルを身に付けておかないと、「相手に誤解を与える」などして思うように仕事を進めることができなくなってしまうからだ。

 テレワーカー全般に必須と言えるのが、曖昧な表現をなくす「ローコンテクストなコミュニケーション」を取れるスキルを身に付けることだ。

 イーブックイニシアティブジャパンの今井輝夫最高人事責任者(CHRO)CHRO室長によるとテレワークでは、ビジネスチャットなどでやり取りしていると、伝え手が意図した内容を、受け手が別の意図として捉えるといったコミュニケーションの食い違いが起こることが少なくないという。

 今井CHROは「リモートワークのコミュニケーションでは、あうんの呼吸が通用しないことが少なくない。そのため、コミュニケーションのテーマになっている物事の背景などを含めた可視化や文字化が重要になってくる」と指摘する。

 例えばビジネスチャットで「サプライズだ」と主語がないメッセージを送るとしよう。この場合、やり取りの流れによっては、受け手が「サプライズと思ったのは、送り手だけなのか、関係者全員なのか」と迷うという。

 一般にテレワーク環境下、ビジネスパーソンがビジネスチャットでコミュニケーションを取ろうとする場合、「相手に伝えたい物事を文字にするのが手間だ」と感じることは多い。

 しかし、イーブックの今井CHROは「文字化や可視化は、リモートワークのコミュニケーションでは必要な取り組みだ。テレワークを中心とする新しい働き方に取り組んでいくには、伝えたい物事を的確に言葉にするスキルが求められる」と指摘する。

イーブックは理想のチーム状態を可視化や文字化

 イーブックではローコンテクストなコミュニケーションの実践が進んでいる。例えば、部署などの業務上の目標とは別に、管理職が理想のチーム状態を可視化・文字化してメンバーと共有するといった動きも出ている。

 具体的には「メンバーが自律自走できるようにする」「変化を楽しむ」といった理想像を掲げてメンバーと共有しておく。「管理職は忙しくなると、理想のチーム状態などは考えないかもしれない。しかし、理想像を考えてメンバーに示しておくことで、チームとしての一体感を醸成したり、メンバーの目線をそろえたりしやすくなる」と今井CHROは説明する。

 管理職を含めたビジネスパーソンは、日々の業務でやり取りするローコンテクストなコミュニケーションが取れるようなスキルも身に付けたい。

 例えば、ビジネスチャットの場合、短いメッセージでコミュニケーションが取れる一方、仕事を進める上で欠かせない背景情報が十分に伝わらなかったり、メッセージの受け手が送り手の意図を誤って受け止めたりする恐れがある。間違った意図を受け手が捉えてしまうと、スムーズなコミュニケーションは望めない。

 そうした状況を回避するためにも、ビジネスチャットなどを活用したテレワーク環境下でのコミュニケーションでは特にローコンテクストなコミュニケーションを取ることが大切になる。

取り違えられないメッセージを発信するスキルが必須

 イーブックの今井CHROは「多少面倒でも、相手に正しく意図が伝わるように言葉を尽くして説明したり、メッセージの受け手が情報を把握しやすく整理したりするスキルが必要だ。音声通話や、ビジネスチャットなどコミュニケーションの種類を問わず、こうしたスキルが欠かせない」と指摘する。

 その一例を今井CHROが書いたメッセージを踏まえて見ていこう。このメッセージは、上司と実施を予定している「1on1ミーティング」についてのものだ。

ローコンテクストなコミュニケーションを心掛けたビジネスチャットのメッセージの例。上段が、メッセージの受け手が意図を取り違えないようにする文面の例。下段はさらに受け手が把握・返信しやすくするために、項目に番号を付ける工夫の例
ローコンテクストなコミュニケーションを心掛けたビジネスチャットのメッセージの例。上段が、メッセージの受け手が意図を取り違えないようにする文面の例。下段はさらに受け手が把握・返信しやすくするために、項目に番号を付ける工夫の例
(出所:イーブックイニシアティブジャパン)
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 上の図上段のメッセージは今井CHROが最初に一通り、まとめたものだ。受け手が意図を取り違えないように、次回の1on1ミーティングで相談したいことを、丁寧なメッセージでまとめている。箇条書きにもしている。

 今井CHROはこうしたメッセージを送る際、急いでいない場合、上段のようなメッセージを下書きとみなし、見直すようにしている。「いったん寝かせて見直すことで、表現で誤解が生まれないか、感情的なメッセージになっていないかといった見直しができる。リモートワークにおけるコミュニケーションのメリットでもある」という。

 その見直し例が上の図下段のメッセージだ。箇条書きの文章を分割して複数の文章に区切っている。「あまりに長いコメントはさっと読み飛ばされてしまう可能性があるので、ポイントごとに区切るようにしている」(今井CHRO)。

 分割した箇条書きの文章は、「CHRO会議の今後の進め方」といった表題を複数加えた上で、分類している。表題に沿って相談内容を整理することで、受け手である上司には見やすくなる。下段のメッセージの工夫は他にもある。「上司が返信をするときにどの表題についての件なのかといったことを表現しやすいように、表題に番号を振った。表題の中で優先度が低いものがあることを伝えるため、(時間があれば)という文言を加えた」と今井CHROは説明する。

 今井CHROはこの他、メッセージを受け取ったときもできるだけ早く、スタンプを使ってリアクションをしたり、「OK。確認しておきます」といったメッセージを送ったりするようにしている。「(読んでくれていないのではないかなど)メッセージの送り手を不安にさせないように心掛けている」と説明する。

・緊急でないメッセージは、出す前に寝かせる
・長いコメントはポイントで区切る
・箇条書きには番号と表題を付ける
・優先度が低い項目は明記する
・もらったメッセージは、読んだことをスタンプや短い返信で知らせる
ビジネスチャットのメッセージが相手に正しく意図が伝わるようにするための工夫例。イーブックイニシアティブジャパンの今井CHROの取り組みを整理した