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新型コロナウイルス対策として在宅勤務を中心としたテレワークが普及する一方、テレワークに取り組むビジネスパーソンにとってコミュニケーションは依然、大きな課題になっている。解決しないと業務の停滞などを招きかねない。そこでテレワーク先進企業の取り組みを中心に、課題の解決策を紹介する。今回は「新入社員や中途社員、異動してきた社員といった新人との対話」の活性化策を押さえよう。

 テレワーク中心の働き方を進めている企業の中で課題となっているのが、新卒・中途採用の新入社員のコミュニケーションだ。

 「2020年春以降、新卒・中途採用の社員に向けた研修や受け入れが従来の集合研修からオンラインへ移行した。研修面では様々なメリットが得られているが、配属先の上司や先輩と、新卒・中途採用の社員の間で、人間関係をどうつくっていけばよいかといった課題に、多くの企業が直面している」。企業における新人や若手育成の動向に詳しいリクルートマネジメントソリューションズ(リクルートMS)の桑原正義HRD統括部HRDサービス開発部トレーニング開発グループ主任研究員はこう指摘する。

 桑原主任研究員によると、新入社員向けの研修については、これまで実施してきた集合研修をオンラインに切り替えるケースが増えている。「遠く離れた所に住む新入社員も長距離の移動をすることなく研修に参加できる」「講師との上下関係を気にすることなく、フラットな雰囲気で学べる」「事前に仕事の進め方などに関する解説動画を見てもらってから、オンライン研修を受けてもらうようにすると、演習や経験を重視したオンライン研修が実施できる」といったメリットが得られている。

企業が新入社員を受け入れる際に実施する施策と、テレワーク環境下での特徴や課題
施策例特徴や課題
研修従来の集合研修からオンライン研修へ移行が進む。新入社員が参加のため、長距離を移動せずに済むようになった。フラットな雰囲気で学べるようになったり、動画を閲覧する事前研修と組み合わせることで、演習などに取り組めたりするメリットが得られている
人間関係づくり配属先の上司や先輩社員がテレワークで働くケースが増えている。人間関係や信頼関係のつくり方が難しい。新入社員は、周囲から仕事の進め方を教えてもらったり、アドバイスをもらったりすることがしづらい
(リクルートマネジメントソリューションズへの取材を基にまとめた)

 職場に配属後の新入社員は仕事に不慣れだ。そのため、新入社員にとって、周囲から仕事の進め方を教えてもらったり、相談してアドバイスをもらったりするコミュニケーションはとても重要だ。

 こうした場面で大きな課題になっているのが、新入社員が職場に配属された後の人間関係づくりだ。テレワーク環境下では、新入社員と配属先の上司・先輩の間で、感情や情緒を伴うような信頼関係づくりも難しくなっているという。「Web会議サービスを使って互いの顔を見ながらコミュニケーションを取っていても、相手の顔はパソコンなどの平らな画面を通して見ることになる。実際に会って話すよりも、相手の表情などがつかみづらい」(桑原主任研究員)からだ。

 さらに「テレワーク環境下では部署の上司や先輩社員との信頼関係が薄くなりがちで、新入社員は相談などがしづらくなる。そうするとちょっと周囲に相談すれば解決できるような仕事上の課題も抱え込んでしまい、とても多くの時間をかけてしまうといった、非効率な状況が生まれてしまう」と桑原主任研究員は指摘する。

 こうした課題を放置しておくと、新入社員のモチベーションが下がって、心身の不調を来すといった状況を招きかねない。このような状況を未然に回避するためにも、新入社員に向けてコミュニケーションを活性化させる策を講じる必要がある。

コミュニケーションを気軽に取れるルールを設ける

 リクルートMSの桑原主任研究員が勧めるコミュニケーションの活性化策は、配属先の部署で新入社員の育成を担当する先輩社員が、新入社員との間で「朝と夕方は必ずWeb会議でつながって新入社員が担当する仕事の状況について共有する」「業務時間中も必要に応じて新入社員からの相談に応じる」といったルールを明確に設定しておくことだ。

テレワーク環境下で職場の先輩社員が新入社員とのコミュニケーションを活性化する施策
施策例概要
ルールを決める「朝と夕方は必ずWeb会議で新入社員が担当する仕事の状況について共有する」「相談事が出てきたらその時点で質問する」といったコミュニケーションを取りやすくするルールをあらかじめ設けておき実践する
アンケートなどで状況を把握する新入社員のコンディションを確かめるために定期的にアンケートを実施して結果を活用する。人物像を把握できる適性検査などの結果を基にコミュニケーションの取り方を工夫する
先輩社員を紹介する新入社員が興味を持つ分野が出てきたら、その分野に詳しい先輩社員を紹介する。簡単な操作で見知らぬ人ともコミュニケーションが取りやすいWeb会議サービスなどを活用して、新入社員の人的ネットワークを広げる
(リクルートマネジメントソリューションズへの取材を基にまとめた)

 朝と夕方の報告の場では、新入社員が困った状況も聞くとよい。「日中、こんなことで困ったのですが、相談してよいのかどうか迷いました」といった新入社員の報告があれば、先輩社員は相談したかった内容に応じて、「社内ルールに関して困った場合はいつでも相談してください」「企画案に関して困ったときには、自分なりに意見をまとめた上で相談してもらえると助かります」などと伝えることができる。

 桑原主任研究員は「1回に5~10分ほどでもよいので会話できる場を設けておくと、新卒社員は気軽にコミュニケーションを取れるようになる。中途採用の社員も会社特有のルールが分からないことが多いので、コミュニケーションを取りやすくするルールを設けるとよい」と説明する。

定期的なアンケートで不調や意欲低下をつかむ

 新入社員とのコミュニケーションを活性化させる策は他にもある。「テレワーク環境下では新入社員のコンディションや人物像が把握しづらくなる。新入社員への定期的なアンケートを通してコンディションの不調やモチベーションの低下をつかめるサービスを導入して活用するのもよい。フォローが必要な新入社員に気付きやすくなり、すぐにコミュニケーションが取れるようになる」とリクルートMSの桑原主任研究員は話す。

 一方、新入社員の人物像の把握については、適性検査ツールや新入社員の強みを評価するツールが役立つという。「先輩社員は、新入社員の個性に合わせてモチベーションを高められるようなコミュニケーションの取り方を検討できる」(桑原主任研究員)。

 さらに、桑原主任研究員は「Web会議サービスなどを積極的に活用して、先輩社員が他部署の社員を新入社員に紹介するとよい」と話す。「新入社員が興味を持っているトピックに詳しい先輩社員を紹介するなどしていくと、新入社員は社内の人的なネットワークを広げられる」と続ける。

 紹介を受けた先輩社員も、日程調整をすれば仕事の空き時間を使って新入社員に無理なく対応できる。Web会議サービスであれば、移動するといった手間をかけずに、URLのクリックといった簡単な操作で新入社員とつながることができて、興味あるトピックの説明などを気軽に始められるという。

 コロナ下でテレワークを中心とした働き方を社内で普及させているテレワーク先進企業でも、新入社員に先輩社員を紹介する取り組みが進む。その1社、化粧品などを開発・販売するランクアップの瀧澤朋美人事総務部課長は「新入社員は新しい職場環境にとても緊張している。少しでも緊張を和らげるためにも、新入社員が今後の業務でかかわっていくような先輩社員を、入社して間もないころから紹介してつないでいる」と説明する。