全1683文字
PR

 渓流上流部で崩落した盛り土が静岡県熱海市伊豆山(いずさん)の市街地を襲った豪雨災害で、盛り土の開発許可などを指導していた県交通基盤部の都市局土地対策課と砂防ダムを担当する同部河川砂防局砂防課とで、不適切な盛り土の情報を事前に共有できていなかったことが判明した。

 県によると、土石流の起点で崩落した土砂の総量は5万5500m3。盛り土はその97%を占める。逢初(あいぞめ)川の最上流部にあった盛り土から400mほど下流側に「砂防ダム」を1基設置していたものの、大量の土砂を受け止めきれず、ダムを乗り越えていった。

土砂で埋まった被災後の砂防ダム(写真:静岡県)
土砂で埋まった被災後の砂防ダム(写真:静岡県)
[画像のクリックで拡大表示]

 県が逢初川に砂防ダムを建設したのは1999年。コンクリート製で堤長が43m、堤高が10m、堆砂容量が4200m3だ。

逢初川の砂防ダムの諸元図(資料:静岡県)
逢初川の砂防ダムの諸元図(資料:静岡県)
[画像のクリックで拡大表示]

 砂防ダムは、上流からの岩や流木などを含む土砂を受け止め、下流への被害を抑える役割を持つ。満杯まで土砂がたまった後も、傾斜角度が緩やかになって川幅が広がるため、土石流の勢いを弱められる役割を持つ。

 静岡県によると、砂防ダムは堆砂容量を大幅に超える約7500m3の土砂を受け止めていた。被害を軽減する効果は一定程度あったが、ほとんどが市街地へ流れ出た。

 逢初川の砂防ダムは「土石流危険渓流」の区域を踏まえて建設された。土石流危険渓流は、土石流が発生する危険があり、住宅などに被害を及ぼす恐れのある渓流だ。逢初川も指定されていた。

静岡県熱海市伊豆山地区付近の土砂災害危険箇所。土石流危険渓流と土石流の発生の危険がある土石流危険区域を表示(資料:静岡県GIS)
静岡県熱海市伊豆山地区付近の土砂災害危険箇所。土石流危険渓流と土石流の発生の危険がある土石流危険区域を表示(資料:静岡県GIS)
[画像のクリックで拡大表示]

 土石流危険渓流の指定は50年以上前まで遡る。建設省の通達で、都道府県は土砂災害の発生の恐れがある「土砂災害危険箇所」の調査を1966年に始めた。土砂災害危険箇所には土石流危険渓流の他、地すべり危険箇所と急傾斜地崩壊危険箇所も含む。

 静岡県河川砂防局砂防課の西川茂課長代理は「砂防ダムの建設当時は、川の上流で土石流が発生しても防げるように設計していたはずだ」と推測する。砂防ダムの規模は基本的に、上流側に存在する不安定な土砂を考慮して決めている。砂防ダムの完成後に造成された盛り土が不安定な土砂として流れ出てしまった。