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 静岡県熱海市で起こった土石流のメカニズムが、徐々に明らかになってきた。逢初川の流域(分水嶺を境にして、降水が流入する全域)の上流部にあった盛り土全体が、流域外の地下浸透水の影響を大きく受け、水を大量に含んで下流まで流れ落ちたという推定メカニズムを県が公表した。

流域を越えて地下水が流入するイメージ。国土地理院が2021年7月6日撮影の空中写真から地山・土砂が見えている部分を判読した図に、濃い青い点線や矢印を静岡県が追記した
流域を越えて地下水が流入するイメージ。国土地理院が2021年7月6日撮影の空中写真から地山・土砂が見えている部分を判読した図に、濃い青い点線や矢印を静岡県が追記した
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 県は盛り土の崩壊について、下流側が起点となって順に起こったと推測している。例えば、想定される現象の1つが「パイピング」だ。盛り土内の地下水位の上昇に伴って、下端部から水が噴出。下端部の土砂が流れ落ちた影響で上部の盛り土も連鎖的に崩落した可能性がある。

盛り土の崩壊メカニズムのイメージ(資料:静岡県)
盛り土の崩壊メカニズムのイメージ(資料:静岡県)
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 崩落した盛り土は下流域の市街地まで流れ込んだ。県が災害後に実施した計測によると、土石流が通った上流域の河道内に盛り土はあまり残っていない。

 難波喬司・静岡県副知事は2021年7月15日の会見で、「盛り土の上部まで満水状態でなければ、上部の盛り土は流動化しないため河道内にたまっているはず」と説明している。つまり、崩壊した盛り土の地下水位はかなり高く、飽和していたことを意味する。