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 静岡県熱海市で発生した土石流災害の起点となった盛り土。その盛り土の排水設備の有無については、被災直後から物議を醸している。そこで日経クロステックは記者会見の内容の他、県が公開している情報や専門家への取材などから、排水設備が十分でなかったと思われる根拠を3つにまとめた。

2020年にレーザー計測などで静岡県が取得したLPデータと2010年ごろの国土交通省のLPデータの差分を取り、盛り土の範囲を赤破線で囲った。静岡県の難波喬司副知事は2021年7月13日の記者会見で「適切な排水施設はかなりの確度で設置されていないと思う」と述べている(資料:静岡県)
2020年にレーザー計測などで静岡県が取得したLPデータと2010年ごろの国土交通省のLPデータの差分を取り、盛り土の範囲を赤破線で囲った。静岡県の難波喬司副知事は2021年7月13日の記者会見で「適切な排水施設はかなりの確度で設置されていないと思う」と述べている(資料:静岡県)
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 まずは、雨の降り方と崩壊した現象との相関から見ていく。今回は、本格的な降り始めから土石流発生直前までの3日間にわたる累積雨量が449mmと過去最大だった。ただし時間雨量の最大は24mmと、この10年間における最大値である同63mm(2016年7月)と比べて多いとはいえない。

静岡県が熱海市水口町に設置した熱海雨量観測所における雨量の推移(資料:静岡県)
静岡県が熱海市水口町に設置した熱海雨量観測所における雨量の推移(資料:静岡県)
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 一般に短時間強雨ほど、地下で流せる容量を超えた水が供給されるため、表層を流れる傾向にある。今回は短時間で大量に降ったわけではなく、数日にわたってやや強い雨が降り続いた影響から、その多くは地中へ浸透したと考えられる。

 SNS(交流サイト)などで拡散した熱海市の市街地を襲った土石流の映像を見る限り、家屋を押し流したのは水を多く含んだ泥流に近かった。崩壊した盛り土は大量の水を含んでいた可能性が高い。

 つまり、盛り土が地下で水をためて飽和状態になって崩落に至ったと類推できる。水をためるということは盛り土に適切な排水設備がなかった、もしくは排水設備があってもうまく機能しなかった――。これが1つ目の根拠だ。