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 延期から1年、東京オリンピック・パラリンピックが2021年7月23日にいよいよ開幕する。日本における新型コロナウイルスの感染拡大状況は予断を許さず、観客数を大きく制限して開催することとなった。競技場や日程によっては無観客となる競技が出てくる可能性も残る。

 海外からの観客を受け入れなかったことで、競技の雰囲気も大きく変わりそうだ。観戦客は日本居住者と一部の大会関係者にほぼ限られ、スタンドなどで自国の選手を熱烈に応援する声援は自粛を迫られる。

 しかし多くの競技場や会場では応援の「声」は確実に選手の下に届きそうだ。競技場に設置された大型のビデオボードや会場の案内ディスプレーなどに、世界中から投稿される選手への応援動画メッセージが流れるからだ。

ソーシャルメディアを活用して、競技場のビデオボードで世界中から投稿された応援動画を放映する
ソーシャルメディアを活用して、競技場のビデオボードで世界中から投稿された応援動画を放映する
(出所:Tokyo 2020)
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 観戦スタイルが全く変わる競技もある。例えば洋上のコースでヨットが着順を競うセーリング競技。これまでは海岸から双眼鏡をのぞいて洋上の駆け引きを追うのが一般的な観戦スタイルだった。しかし東京五輪では競技場となる神奈川県の湘南地区で、洋上の競争があたかも目前で繰り広げられているかのような観戦体験を味わえる。支えるのは、ドローンや5G(第5世代移動通信システム)などのデジタル技術である。

世界中からの応援が届く

 競技に臨む選手に応援の動画や言葉を届ける「TOKYO 2020 Share The Passion プロジェクト」は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)が主体となって取り組む。Twitterなど既に普及しているソーシャルメディアを活用することで、シンプルながら世界中の人が参加できる仕組みをつくり上げた。

 受け付けるメッセージは3種類で、具体的には「あらかじめ用意された音源に合わせたダンスや手拍子で選手を応援する15秒以内の動画」「投稿者が自由に撮影した30秒以内の動画」「140文字以内で作成したテキスト」である。この3種をFacebookとInstagram、TikTok、Twitterという4つのソーシャルメディアに投稿できる。

 投稿された動画は、組織委員会がシステムで抽出してつなぎ合わせ、競技場のビデオボードで流す動画として編集する。作業は自動で、この自動作成機能は大会スポンサーである中国アリババグループ子会社のアリババクラウドが開発した。公序良俗に反するなど、利用規約に違反する動画を自動で検知・除外するAI(人工知能)技術も同社製だ。

 応援動画の制作・配信には、放送映像の制作を担当するOBS(オリンピック放送機構OBS)も参画。出場選手の母国からの応援を配信するほか、来日できなかった選手の家族らとのビデオ対面も実現させる。実際の歓声ではなく、動画からの声援に後押しされて競技に臨む選手の姿が中継で見られるかもしれない。